空は遠く15

back  next  top  Novels


 それに、力の背中を見ているのがよかったのに。
 とどのつまり、佑人の意見が通った形になり、『不都合』と思っている連中が替わりたい席の生徒と交渉を始めた。
 ものの十分ほどで席替えは終った。
 おおよそ、真面目に授業を受けようという者は前へ、『不都合』のある者が後ろへと移動した。
 最初に啓太の前の生徒と東山が席を替わった。そして啓太の隣、佑人の斜め前に力が陣取ったのだ。
 ――――まさか………!
 佑人は驚きと嬉しさを急いで押し殺した。
 見ていたい背中は恐ろしく近くなった。
 以来、何度か『不都合』のある者の希望で席替えが行われたが、佑人のいる四人の一角にはあまり近づこうという者はいなかった。
「成瀬ってば、早く行こうぜ」
 はっと顔を上げると、啓太の愛嬌のある目が佑人を覗き込んでいる。
「あ、悪い。やっぱ眠くてさ」
「だろお? ほらみろ、成瀬も眠いっつってんじゃん」
 我が意を得たりと得意気な啓太の頭を今度は力がはたく。
「お前とは眠い理由が天地ほども差があるんだよ」
「ってぇな、ちょっとでかいと思ってよー」
 力を見上げて睨みつけながら小柄な啓太が文句を言う。
 佑人はどうやらカラオケに自分も行くことになってしまっていることに苦笑する。
 カラオケか、苦手だな。
 家族で行ったことはある。陽気な両親も兄も思い切り歌いまくった。俺、苦手だし、と佑人だけが一歩下がってみていた。何をやっても一歩下がってみる癖が身についてしまった。
 ぞろぞろと後ろから教室を出る一行に、まだ教室に残っていた生徒が目を向けるのに佑人は気づき、未だに奇異な見られ方をしているらしいのに心の中で苦笑する。
 優等生面を一皮剥けば、名うての問題児だったりってさ。
 だができればこのまま静かにしていたい、一緒にマックに寄るだけのつき合いのままでもいいから。
 それでいいんだ―――――。
「カラオケ? 俺も混ぜてよ」
 唐突に後ろから低い声が飛び込んできた。
「坂本」
 力があまり歓迎しない口調で、近づいてくる長身の生徒の名を呼んだ。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ