「ばぁか、成瀬は入れてくれるとこばっかだから、選ぶのが大変なんだよ」
東山が佑人の変わりに答える。
志望校を決めかねているのは、国外も視野に入れているからだ。
山本は、どうするんだろう。
思わず心の内でそんなことを呟いた佑人はちょっと苦笑する。
「ねぇ、力って文系? 理系? どっちかくらい決めてるんでしょ?」
「文系だよね? 絶対」
佑人だけではなく、女子の間でも力の進路は気になるものらしい。
「っせーな。てめぇらに関係ねーだろ」
不機嫌そうな声とともに力が立ち上がるのを見て、佑人は顔を逸らす。
ってそっか、俺には関係ないか。俺ってとことんバカ?
「あ、成瀬」
力が数人の女子にキャラキャラと囲まれているうちに、ロッカーからコートを取り出した佑人は廊下から呼んでいる声の主を見た。
「ちょっと聞きたいんだけど、柳沢さんの好みって何か知ってる? 食べ物でも酒でもいいんだが」
コートを羽織って佑人が廊下に出ると珍しく坂本は真面目な顔で聞いてくる。
「酒なら、ワインとか好きみたいだけど。食べる方はあの人、甘い物も辛い物も好き嫌いはないみたいだ」
佑人はちょっと小首をかしげる。
「ワイン、ワインだな。いや、うちの親がさ、柳沢さん、礼儀正しいし、えらくすばらしい家庭教師だとかって感激しちゃってさ、何かお礼がしたいってんで。ってぇと、シャトーなんたらとかロマネコンティとか?」
「いや、そんなんじゃなくても全然、そういえばイタリアのワイン結構好きとか言ってたかな?」
佑人は柳沢の顔を思い浮かべながら言った。
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