空は遠く141

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「なるほど、そっか、わかった、サンキュ。そういや、うちの親、いい人紹介してくれたって、成瀬んとこにも何か礼したいとか言ってたぞ」
「え、うちなんか別にそんな心配しなくていいから」
 廊下の窓から外を見ると、霙は大粒の雪に変わっていた。
「成瀬、お待たせ」
 学生のくせにトレンチコートが妙によく似合う上谷は、姿勢正しく、整った顔立ちに爽やかな笑顔を周囲に振りまくように佑人の元へやってきた。
 上谷が通るだけで女子の目はその姿を追っている。
 だが、別に佑人は上谷を待っていたわけではない。
 週に何度か、生徒会の仕事がない時など、勝手に佑人を誘いに来るようになった。
 佑人としてはあまり目立ちたくはないので、今日もさっさと帰りたかったのだが。
「成瀬、ダッフル似合うよな、可愛い」
 しかも帰国子女というより、半分アメリカ人のせいか日本人なら言葉にするのを躊躇するようなことも平気で口にする。
 ある意味兄の郁磨と同質の部類に入るのかもしれないが、兄以外の人間に、そんな台詞を言われるとぞっとしない。
「図書館行く?」
 ここのところ柳沢が来ない日は図書館で勉強していくというのが日課になりつつある佑人に、この上谷が勝手につき合うようになった。
 さすがに図書館ではうるさく話しかけてくることもないのだが、問題の解き方を話す上谷の言葉がいつの間にか英語なので、何となくボストンにいた頃に戻った気がして、つられて佑人も英語で返したりする。そんな時間は佑人にとっても悪いものではなかったのだ。

 


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