カウンターの女の子は力と顔見知りのようで、親しげに話している。話の内容から、どうやらこのカラオケボックスは力の母親関係の店らしいのはわかったが、やたら女の子が力にべたべたしているのを見て、佑人は顔を背けた。
「しっかし、男五人かよ、力がわんさか女連れてくるんかと思ったのにさ」
相変わらずにやにやと得体の知れない笑みを浮かべながら、坂本は啓太と佑人が座っている間に割り込んだ。
「そいつはこっちの台詞だ、龍成。最近、どうしたよ、ジュケンベンキョーが忙しくて女も絶ってるってわけじゃねぇだろ?」
「ほどほどには。まあ、これからは正念場ってヤツだから、たまの気分転換くらいか?」
いかにも旧知の間柄といったようすで、向かいに座る力がポケットから取り出した煙草から坂本が一本をとってくわえる。
母親の関係だからこそ、おおっぴらに制服で煙草など吸っているのだろうが、二人とも制服でなければ、高校生には見えないかもしれない。
「え、力、こいつダチなの?」
啓太が目を白黒させて二人をみやる。
「中学の時、よくつるんでたよな」
慣れた仕草で煙草を燻らせる坂本が言う。
「じゃ、坂本も一中?」
「有名私立合格したのに蹴りやがって、うちに来たってバカだ、こいつ」
力がフンと鼻で笑う。
「M高からT大入ったって面白くもなんともないだろ? 愛すべき我が都立南澤に貢献してこそ東京都民だっつーの。なあ、成瀬」
いきなり振られて、佑人は返す言葉がない。
坂本と力が中学もずっと一緒だったということが、いや、つるんでいたという事実が、佑人を嫌な気分にさせる。
「そっかあ、坂本って力の中学からのダチだったんだ」
それだけで単純に坂本を見る啓太の目が変わったようだ。
「俺と東、二中だったんだ。な、成瀬は………」
「よっしゃ、歌うぞ!」
佑人に向かって何か言おうとする啓太を遮るように、坂本が立ち上がった。
「あ、おい、入れたの俺だぞ!」
啓太より先にマイクを握った坂本が、大音響で流れる音にあわせてアニメソングを歌いだす。
啓太もマイクを握り締め、坂本に負けまいと声を張り上げる。
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