だらしなく学生服のボタンをいくつかあけて、一応カバンらしきものを抱えている啓太や東山などもあまりまともな生徒には見られていない。
いわゆる落ちこぼれ、学校の鼻つまみ者、関わりあわない方がいいだろうろくでもない連中と決めつけられているのだ。
まあ、問題児といえば山本力は彼らの上をいくらしい。
母親がクラブをやっている関係で、お水の女と付き合っているだの、ヤクザと喧嘩して目をつけられているだの、素行不良で停学をくらっただの、ろくな噂はない。
授業もかろうじて出席日数は足りているものの、教師の間では明らかにブラックリストの筆頭のようだ。
教師たちの評判とは裏腹に、力は生徒たちからは妙に人気があった。それに一応成績がほどほどだということでは、力は東山や啓太と一線を画している。
授業をサボることは多いものの体育祭などの行事にはちゃんと参加し、しかもリーダーシップを発揮して期待通りの活躍をする。
一年の時の球技大会では、バレーで二年のクラスを相手に力の重いスパイクが決まって勝利をもたらしたことで、一気にその名は知れ渡った。
部活には所属していないが、サッカーをやらせても野球をやらせても時折、部活で毎日トレーニングしている連中が嫌になるような才能を発揮するのだ。
それに精悍で男前なマスクは女生徒を引きつけるのに充分で、高校入学当時から力の彼女と言われた女生徒が校内、他校含めて何人いたことか。
「そういや、力、りえちゃんとどうよ? 最近」
「知るか。あっちが勝手に誘ってきただけだ」
力はぶっきらぼうに即答する。
「うっそだろぉ? 杉山女子のりえちゃんだぞ? このあたりじゃ、ヤローどものマドンナなんだぞ?」
東山の声が裏返る。
「うざってぇんだよ、べたべたしやがって」
「お前、何のためにつきあうんだよ? べたべたするためだろぉが?」
「じゃあ、お前がつきあえよ」
うるさそうに力は言い捨てる。
―――――別れたんだ………
佑人はこっそり心の中で呟いた。
一番この集団の中で違和感があるのは佑人だろう。
一人、染めてない柔らかい髪はさらさらと小奇麗に整い、銀縁のめがねは学年一番の成績を物語るにふさわしい。
きちんと学生服のボタンはとめられ、羽織ったコートはバーバリー、品行方正でいいところのおぼっちゃんを絵に描いたような少年だ。
とはいえ、試験明けに上位の成績が張り出される時くらいはその名前が他の生徒たちの前に知れるものの、常に控えめで物静かな佑人は、いるのかいないのかわからないような存在だと思われている。
よく見れば眼鏡の下はひどくきれいな顔をしているのだが、気づいたものは少ないかもしれない。
それにしても、こうも頻繁に力や東山らのグループと一緒にいれば、生徒の間でも、また教員たちからも、明らかに佑人はワルのグループに無理やり引っ張り込まれて、おそらくイジメを受けているに違いない、などとという評判も聞こえてくるというものだ。
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