ACT 21
校庭に一本だけ、際立って大きな桜が校門を入ってすぐ傍にある。
その太い幹からも他の桜とは明らかに年代が違うことがわかる。
この学校の前身だった実業学校時代からあったというこの桜だが、当初はもう一本対になる木が向いにあったらしいとは、校務員が話していたのを佑人は耳にしたことがある。
窓の外を見ると、春らしいのどかな青空を背景に桜の花びらが宙を舞っていた。
この学校の校舎は一年生、二年生は中央棟の西側、三年生は中央棟東側となっている。
始業式の朝はそれぞれ玄関前の掲示板に、各々のクラス一覧表が張り出されており、東側玄関前では幾分かの期待と好奇心を伴いながら新三年生が自分の名前を探していた。
三年になったら受験に身を入れるかなくらいで、その可能性を何故全く考えなかったのだろうと、佑人は担任の加藤が教壇に立って出席を取るのをぼんやり見つめていた。
思い込んでいた。二年が終われば、力とはもう縁がなくなるのだと。
三年生はAからDクラスまでが文系、EからGクラスは理系と一応受験に合わせたクラス編成となっており、文系は三階、理系は四階に分かれている。
Eクラスに自分の名前を見つけた佑人は、担任が加藤健次郎になっていることに少しほっとした。
担任とは進路などのことで少なからず言葉を交わすことになるし、知っている教師だとありがたいと思っていた。
二年の時も担任だった加藤の担当科目は数学で、わかりやすくて面白い授業をするし、まだ三十前の独身だが大柄で大らかな性格で生徒からも慕われている。
何より佑人にとっては新しく誰かと話すよりストレスを感じなくてすみそうだった。
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