空は遠く206

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 かろうじて、振り返らなければ力の姿は見えないことは、佑人にとっては好都合だったかも知れない。
 教室でもほとんど話したりすることはなかったのだ、このまま疎遠になるだけの話だ。
 だがまたしても佑人の思惑があっという間に崩れたのは、初日からみっちり気を抜けない加藤の数学が終わり、昼休みになって間もなくのことだった。
 何やら息苦しささえ覚えたこの空間を離れて、外で食べようと、佑人は朝、コンビニで買ってきた調理パンや牛乳の入った袋をリュックから取り出した。
「力、力ぁ~!」
 教室を出て行く生徒たちの間から、小柄な影が声を上げて飛び込んできた。
「なんだよ、啓太」
 のっそりと立ち上がった力に、啓太がぶつかるように飛びついた。
「おう、啓太、わざわざ、お出迎え?」
 東山が笑いながら歩み寄る。
「東ぃ! 俺、どうしよぉ~!」
「何だよ? しょっぱなからセンセーに叱られたのか?」
 そこで啓太と目が合わなければ、目立たないようにという佑人の希望もかなったかも知れなかったのだが。
「わーああ、成瀬ぇ~!!」
 力に泣きついていた啓太が佑人を認めた途端、今度は佑人に半べそで抱きついたのだ。
「どうしたんだ? 何かあったのか?」
 大きな目をうるうるさせてすがってこられると、佑人もつい聞かないではいられない。
 三月生まれと自分で話していた啓太も十七歳にはなっているはずなのだが、姉二人と少し歳が離れているらしい文字通り甘えん坊の末っ子体質な啓太は、小柄なこともあり、年齢にしては幼い感じがする。
「とにかくメシ、行こうぜ、ほら啓太、成瀬歩けねぇだろ、引っ付いてると」

 


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