佑人なら、自分から声をかけたりしないからそんなことをわざわざ気にすることもないのだが、人懐こい啓太にしてみれば悲しいことだったのだろう。
「買ってきたぜ」
おにぎりやパンを抱えて戻ってきた東山の後ろから、坂本も牛乳やジュース、コーヒー缶などを抱えてやってきた。
「啓太、お前らのクラスに泣きついたんだって? よう、成瀬、久しぶりじゃん」
「ほら、啓太、腹減ってるんだろ? とにかく食え」
啓太も東山にパンやおにぎりを差し出されると、食欲を思い出したようにがっつき始めた。
「フーン、啓太、イジメにあったわけ? 坂本、お前同じクラスなんだろ? 何があったんだ」
ひとしきり食べ終わった頃、啓太が他の生徒に無視された話を聞くと、東山がボソリと言った。
「いや、何がって、クラスの中で自然と、グループ分けみたいなもん?」
軽く訂正したのは坂本だ。
「何だ、それ」
力が坂本を睨みつける。
「いやだから、流行ってるだろ? 今。あちこちで。まあ、うちは三流高だけど公立だからそんなきついわけじゃないけどさ、一応、流行りにはのっとかないと」
「ああ、俺も妹から最近聞いたんだけどよ、三年でんなことやってるヒマあり?」
「まあ、理系はどっちかっていうと受験でそんなヒマないって感じのやつらばっかだけど、文系はな、ヒマなやつらも多いし」
東山の発言に坂本が答える。
「ってか、去年とかそんなんあったか?」
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