空は遠く8

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「そんなの、勝手な人間の都合でさ! 飽きたとか、飼えなくなったとか、勝手な理由で殺されちまうんだ! そういうの俺は許せねぇんだ! 絶っ対!」
 拳を握り締めて佑人に怒鳴りつけるように言う力に気圧されて、佑人はただ、コクコクとうなずくばかりだ。
 捨てられた犬や猫は殺される、それは佑人にとってものすごく恐ろしい事実であり、またそそれをを許せないという力は佑人には完全に『正義の味方』として認識された。
「お前、一匹持ってけ」
「えっ!?」
 言うが早いか、力は、佑人が母に渡された買物袋に、箱の中から一匹を掴んで入れてしまう。
「いいか、責任もって飼うんだぞ! 捨てたり、保健所やったりしたら、俺が承知しねぇからな!」
「わ…かった! 僕、絶対、責任もって飼うよ」
「俺はこいつら持ってく。親になんか口出させねぇ!」
 ふたを閉じた箱を抱えてすくと立ち上がった力は、佑人を見下ろして、「お前もわかったな!」と念を押す。
「うん、約束する!」
 親にさえ口を出させないというその時の力は、佑人の目にとてつもなく頼もしく見えた。
 まるで正義を護るスーパーマンと二人だけの約束をしたかのように高揚した思いで、パンを買うことも忘れて仔犬を連れ帰った佑人は、母親に懸命に力との約束のことを話した。
 母は佑人の話を聞いて、「ちゃんと世話をするわね?」と言っただけで、仔犬を飼うことはすんなり許された。
 その時の犬が、ラッキーだ。
 もともと犬やら猫やら鳥やらいないことがなかったという祖父の家では、一匹犬が増えても何の問題もなく、動物好きな父も兄もラッキーを可愛がった。
 仔犬はやんちゃぶりをはっきしながらすくすく大きくなって、すっかり一家の一員になった。
「ゴールデンかな?」
「シェパードっぽいぞ」
「ミックスだね」
「いずれにしても、こりゃ、長毛種でしかも大型犬だ」
「佑人、世話が大変だぞ。がんばれよ」
 兄と父はそんなことを言って佑人をからかう。
 夏休みが明けると、佑人は力に仔犬のことを早く話したくて仕方なくて意気揚々と学校に行った。

 


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