清風17

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「離せよっ! バカやろ! いやだって……ば…っ」
 ぐっと工藤の手のひらが中心を掴むと、暴れる良太の動きが鈍る。
「しばらくかまってやってないから、たまってるんだろ」
「る……っせぇ…、あんたなんかに……!」
「欲しいんじゃないのか?」
 からかうように耳元に囁かれて良太の血液がざわめきたつ。
「ば……っかやろうっ!」
 長く放っておかれた身体は、良太の口にする言葉とは裏腹に工藤の指の熱さに素直に開いていく。
 ……俺ばっか……好き……なんて……
 熱いばかりの口づけに良太の空しいバリケードも崩れ落ちた。
 工藤に餓えていただけ工藤を欲しがっている。
 工藤はまだシャツを着たままなのに、ソファから絨毯の上に引き摺り下ろされた良太の体は素裸で、だが、羞恥と悔しさも一瞬のこと。
 既に蕩けた身体をじらしながら昂ぶらせていく工藤を、濡れた目で睨みつけるのだが、そのうち良太は甘い息を絶え間なくもらしながら、ねだり始める。
「……っ、やだ……く…ど……!」
 工藤にはそれがたまらずかわいいのだ。
「あっ……っ!」
 追い上げてやると良太は色めいた声を上げて泣いた。
 良太の中に押し入って揺さぶりながら、工藤はさらに良太を喘がせる。
 はあっ、と、息を吐いたのもつかの間、揺さぶられながら与えられる悦楽に、それでもまだ足りないと、良太はただすすり泣いた。
「……良太…」
 名を呼ばれ、目が眩むような過度な刺激になす術もなく、良太は深い愉悦の底へ落ちていった。
 
 
   
 
「いつまですねてるんだ。ガキみたいに」
「……っせーや! チクショー!」
 シーツにもぐりこんだまま、良太は喚く。
 良太の意識が舞い戻るとバスルームに連れて行ったのだが、工藤はそこでついまたさらにいたぶった。
 全身が敏感になり過ぎている良太の体は工藤の指のちょっとした刺激にも、燻っている身体の芯に火をつけた。
 我を忘れて感じまくった己の痴態を思い出すと、良太はそのままドロンと消え去りたいくらいだ。
 一層工藤のエロさがパワーアップした気がする。
「あんた、オヤジ、入りすぎなんだよっ!」
 全然かまってくれないと思ったらこれだからな。
「オヤジだからな」
 思い切り喚きたてる良太に、工藤はしらっと答える。
「食わないのか? ハードに運動したからな。腹が減ってるだろ」
 チラッと顔を上げると、バスローブ姿の工藤は涼しい顔でパンを齧っている。
 途端に良太の腹の虫が鳴った。
 ワインをゴクゴクと飲み干し、長いこと待てをされていたワンコのようにローストビーフやチーズにがっついている良太の横で、工藤は新聞を片手に、好きなラム酒をやっている。
 健啖振りもむき出しにあらかた食べ終えて、一息ついた良太は、ようやく大事な問題がまだ解決していないことに思い当たった。
 良太は手の甲で口の辺りをぬぐうと、工藤に真正面から向き直った。
「大体、あんた、きたないよ! 俺のこと体で丸め込もうなんて!」
「へえ、お前は体で丸め込まれるのか?」
 新聞から目を離し、工藤はニヤリと笑う。
「揚げ足、とるなよ!」
 耳まで赤くなった良太は必死で喚く。
「ほんとは千雪さんのこと、好きなくせに!」
 良太が喚くと、工藤は小さくため息を吐く。

 


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