ひまわり(将清×優作)11

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「……友達だろ?」
「友達ってのは大抵のことは話せるやつのことを言うんじゃないのか? 見合いのこと何で黙ってた?」
「またその話かよ。だから恥ずかしかったんだよ。お前と違って恋人の一人もできずに見合いとかって」
「だから、何で急に見合いなんかする気になったんだ?」
 真っ直ぐなきつい視線が優作を貫いた。
「何でって……親もいい加減身を固めろってうるさいし。それに……」
 優作は唇を噛み、一つ息を吐いてから口を開いた。
「俺はさ、ずっとお前に歩調を合わせるのに精一杯だったんだ。お前に手を引っ張ってっもらってようやくって感じで。お前は何をやるにも余裕でさ。でも俺はお前に足並みを揃えるだけでもういっぱいいっぱいなんだ。どんなに背伸びしてもやっぱりお前には追いつけない。初めから無理だったんだよ。お前と俺とじゃ……何もかも違い過ぎる」
「何バカなこと言ってんだ? 人間誰しも違うに決まってるだろ?!」
 将清は険しい形相で怒鳴りつけた。
「俺は少し楽に生きたいって、等身大の自分でいたいって思ったんだ」
 優作がそう言うと、将清はさらに剣呑な眼差しを向け、何かまだ言おうとしたが、優作は背を向けた。
「とにかく、俺、ちょっと色々考えたいし」
 将清を残して編集部に戻ると、自分の席で優作はまた一つ大きく息を吐いた。
 これで……、やっと自分の身の丈の道を歩いていける。
 いや………、違うか、ほんとはずっと憧れていたんだ、あいつに。
 すごく好きだったんだ……
 モラトリアムの中でならひょっとしたらそのままでいられたかも知れないけど。
 大体、あいつに対してこんな気持ち抱えててどうするって………現実を見なきゃ。
 将清に言うべきことを言ったせいなのか、優作の脳裏に初めて将清と出会った頃のことが、次から次へと脳裏に蘇って溢れそうになった。
 
 
 ほんとに、些細なことで知らない誰かがいきなり心の中に住みつくこともありなんだな。
 田舎から上京して初めての一人暮らしを始めたばかりの頃、優作はかなり気負っていた。
 まあ、東京の大学に進学したとはいっても、実際優作の通う文学部は東横線沿いにあり、地図上は神奈川県だった。
 それでも渋谷へは三十分もかからないし、M市出身の優作にしてみれば十二分に都会で、刺激的だった。
 キャンパスを歩く学生たちは、誰もかれもが洗練された大人に見え、優作は元来の負けず嫌いな性格から、必要以上に肩に力が入っていた。
 だが上級生ならまだ納得もできたろうが、同じ学部には一段と目立つ男たちが何人か集まっていた。
 しかもその男たちの周りを、少なくとも優作目線でいくと田舎には絶対にいないだろう美人な女の子たちが取り巻いていて、華やかさを助長していた。
 芸能人かと優作が思ったほどのイケメンでしっかりした体躯に加え、爽やかな笑顔が憎らしくさえ思えたその男こそが毛利将清だ。
 

 


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