中学の頃までは何も考えずにみんなと一緒に遊んで、学校が楽しくて、バカやっていられた。
でも受験の頃からだろうか、いつもつるんでいた仲間とは志望校が違ったせいもあっただろう、前のように思い切り遊ぶというようなこともなくなったが、それも受験が終われば、また今までのように会えるだろうと、優作は軽く考えていた。
だが、優作が一人地域では進学校として知られる高校に、仲が良かった仲間たちは別の高校に進学が決まり、迎えた卒業式の日。
「打ち上げ、優作も誘うか?」
「優作? あいつがくるとシラッケんだよな。一人でウケてる気んなって、ノリがいいつもりでいるからよ」
そう言ってゲラゲラ笑っているのを偶然聞いてしまった、今まで友達だと思っていた同級生の本音。
親友とさえ思っていたやつに、そんな風に思われていたなんて。
そんなもんか。
高校に入っても、誰に対してもどこかで線引きをして付き合っていた。
だからクラスメイトではあっても友達、はいなかった。
それでも、当時の生徒会長に声をかけられて副会長を精一杯やったが、どのみち自分は二番手以下だと自分に言い聞かせていた。
佳澄との付き合いも一歩踏み込むこともしなかった。
振られたのは当たり前なのかもしれない。
大学に入って、彼女を見つけて、なんてことも思っていたが、遊ぶために親に金を出してもらっているわけではない。
こんな付き合いもほどほどにしておけばいいんだ。
誰かがオーディオをかまったらしく、去年からヒットしているアイドルの曲が部屋に流れ始めた。
「どした? 優作」
はい、とビールの入ったグラスを差し出されて、部屋の隅の方に突っ立っていた優作は顔を上げた。
何がどうなっても、こんな芸能人みたいな、いや、ミドリはモデルだから芸能人に分類されるのか、そんな美女にビールを渡されるなんてシチュエーション、考えてもみなかった。
「いや、すんげえとこに住んでるなって、あいつ」
受け取って一口飲んだが、慣れていない酒は苦いばかりだ。
「ああ、祖母が入学祝に買ってくれたんだってよ?」
「すんげえ祖母って、何者?」
「ああ、ほら、スグナオールって風邪薬、知ってる?」
「俺、その薬じゃないと風邪治んねーし」
「やっぱ誰でも知ってるみたいね、祖母ってそこの社長。将清、高校の時まで祖母と暮らしてたから、いっつもあたしの部屋とか、入り浸っててさ」
え? すんげ有名な製薬会社じゃないか。
え? え? じゃ、やっぱミドリが彼女なのか?
芽衣かどっちかだと思ってたけど。
「わりいな! うちは禁煙なんで、どうしてもなやつはバルコニーかどっか行け」
声がする方を見ると、将清が誰かが口にくわえた煙草を取り上げている。
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