当時の生徒会長は何でも杓子定規に取り締まるとかではなく、柔軟に対応できるやつで、部室で屯していた連中も次はないからってことで教師に報告したりしなかったっけ。
とにかく、そんな自分が、このザマ。
自己嫌悪でいっぱいになりながら、コーヒーもブラックで飲んだことはなかったから苦いなとか思いながら飲んでいた優作に、将清が明らかに憐憫の視線をよこした。
「ああ、いや、その、ビールとか飲んだことなかったなら余計わからなかったと思うけど、ミドリがお前に渡したやつ、ビールじゃなかったんだ」
「は? 何それ」
優作は怪訝な顔を将清に向ける。
「いや、あいつ、いつも好きでそうやって飲んでるから、つい、お前にも同じやつ渡したみたいだが」
言いづらそうに将清は言葉を選ぶ。
「ビール一杯でひっくり返るお子様なんかにアルコールなんか渡すなよ」
「ああ、ビールじゃないんだよね、ジンのビール割?」
「は? ドッグズノーズなんかこいつに飲ませたのか? お前!」
「いや、あたし、好きだし、そんなカッコいいもんじゃなくて、結構ジン多め? とか」
「アルコール未経験のヤツに渡すなよ、そんなもん!」
「だって、ゴクゴク飲んでたし」
ミドリとのやり取りを話して聞かせた将清は苦笑いを浮かべた。
「ま、さ、ミドリも別に悪気があったわけじゃないから、怒らないでやってくれよ」
言われなくてもミドリが悪いとは思えなかった。
「ごちそうさま」
優作は立ち上がると、食器を重ねてキッチンのシンクへ持っていく。
「ああ、置いといてくれれば食洗器入れるし」
「食わせてもらったから、洗うよ。お前のもかして」
若干すまなそうに持ってきた将清の食器も優作はしっかり洗うと、キッチンペーパーで拭いて傍らに置いた。
それからソファからリュックとパーカーを取ってくると、将清にしっかり頭を下げた。
「迷惑かけて悪かった」
「何、他人行儀なことやってんだよ、そんな……」
「俺の思慮が足りなかったんだ。アルコールも飲めないガキのくせにお前らの飲み会に混じったり、もう、今後一切、俺のことは誘わなくていいから」
「え? 何言ってんだよ」
「じゃ、俺、大学行くから。世話になった」
たったか玄関に向かう優作に、「おい、ちょっと待て、俺も」と将清は慌てて自分のバッグを掴んで優作の後を追った。
部屋を出ると既にエレベーターは下降している。
「おいおい、何でそうなるんだよ!」
将清はイラついて非常階段を駆け下りた。
ようやく将清が通りに出ると、優作はトボトボと駅への道を歩いていた。
「待てっての!」
将清は追いついた優作の腕を掴んで振り向かせた。
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