「何だよ!」
「俺も授業行くんだよ!」
優作はムッとした顔で将清の腕を振り払った。
「まだ怒ってるのかよ」
優作の顔を覗き込むようにして将清が言った。
「面しろおかしく笑いものにするネタが欲しければ他をあたってくれ」
「はあ? お前、だからメイクしてったのはどっちかってと、可愛いっていう親愛の情だって。お前、それ、ひねくれすぎてねーか?」
「俺がひねくれていようが、お前には関係ない。もう俺に構うな!」
優作は足を速めるが、すぐに優作は追いついて横に並ぶ。
脚が長いって誇張してんのか。
くっそ! もうこいつの何もかもが気にくわない。
「何、お前、高校ん時イジメにでもあったわけ? だからそんな果てしなくネガティブ?」
将清の言葉はいちいちカンに障る。
「イジメなんかねえけど、とにかく俺は、お前らみたいやりたいように人生楽しく生きてきました、みたいな人種とは違うんで」
「ああ、そう、そんな、お前、えらいわけ?」
今度は将清の言葉に棘があった。
「勝手にどうとでもとれば? もう、放っとけよ!」
優作は将清を睨みつけると、走り出した。
さすがに追ってはこない。
もう、いい加減、声なんかかけてこないだろう。
ほんとに、ほっといてくれ。
俺はバイトと授業とで手一杯なんだ。
今日だって、一限目、出られなかった。
一コマでも落としたくないのに。
まあ、結局は自分のせいなんだけどな。
ビールってわかってて飲んだし。
いや、ビールより強い酒だったみたいだが。
結局は、あいつらにホイホイついて行った俺が悪いんだ。
「ねえ、将清、優作はどうしたの? まだ具合悪そうだった?」
一人で現れた将清の隣にすとんと腰をおろしたミドリが聞いてきた。
「いや、具合は悪くない」
「え? ちょと、まさか、これ幸いとばかりに、手出したんじゃないでしょうね?」
半ば本気で問い詰めるミドリに、将清は嘆息した。
「するかよ! 大体お前らがあんないたずらするからだろ」
「え、まさか、恥ずかしくて来られないとか?」
「ばっか、メチャ怒ってんだよ。後ろ、最上段の隅にいるだろ」
後ろを振り返って優作を見つけたミドリは、すぐさま立ち上がろうとしたところを将清に制止された。
「やめろ! 今は。とにかく、あいつ、なんか、笑いもののネタにしたいなら他あたれ、とか、ネガティブなことばっか」
「え、そんな、つもりなかったよ」
ミドリも言葉が段々しりすぼみになる。
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