ひまわり(将清×優作)28

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「一平だよ、ボーカルの」
「ああ、元気の用心棒」
 優作はついいつも思っていることを口にした。
「く……それ、いいわ、用心棒」
 優作がぼそっと言うと、将清が笑った。
 やがて元気がギターを背負ってライブハウスから出てきた。
「腹減った、俺。何か食いに行こうぜ?」
「おう。あれ、一平は?」
「ああ、あいつは女と消えた」
 将清が聞くと、元気はいつものことさと笑った。
「あ、マック! 俺もう一歩も動けねぇから、マックにしようぜ」
 三人は苦笑しながら、よほど腹が減っていたらしく速足ですぐ近くのバーガーショップに入っていく元気の後に続いた。
「そうだよ、絶対バンドやった方がいいよ」
 しなやかで細い指がガツガツとマックサンドを平らげていく元気の横に座った佐野はそう言ってから、お行儀よく背筋を伸ばしてハンバーガーを食べる。
「ああ、だよな、お前ら、一平とお前、何か昔っから一緒にやってたみたいに息が合ってたもんな」
 将清は既に軽く一つ食べ終わり、ポテトを齧っている。
「まあ、やろうっては言ってるんだけど、ドラムスがさ、一平の前のバンドのヤツらしいんだけど、また一緒にやるの渋ってるみたいで。ベースはみっちゃんに声かけてるんだ。ほら、古田、眼鏡の」
「ああ、あのいつも美人連れてるやつ?」
 つい悔しさ半分、優作は口にした。
「涼子とは高校からの付き合いなんだってさ」
「いいよな、カップルで同じ大学って」
 あまりに羨ましいという感情が入ってい過ぎたのか、「何だよ、お前、彼女は他の大学行っちまったか?」とすかさず将清が突っ込んでくる。
「悪かったな。彼女は関西の大学で、遠恋はムリって振られたんだよ!」
 優作はやけくそでぶちまけた。
「そりゃまた、ご愁傷様」
 からかい半分で将清はニヤニヤ笑う。
「るさいよ! 彼女がいっぱいいるお前になんか同情されたかない!」
「おいおい、俺は今、フリーだぜ?」
「彼女候補がわんさかいるようなモテ男が何言ってんだよっ!」
 将清と優作の言い合いに、「あ、なるほど」と元気が割り込んだ。
「優作ってば、取り巻きいっぱいいる将清が羨ましくて、将清に反旗を翻したと」
「バッカ、誰が羨ましいとか言ったよ!」
 元気の指摘がまんざらゼロでもないことは、優作もわかっていた。
 くっそ、そうだよ!
 俺は将清が羨ましいだけだよっ!
 でも口が裂けてもそんなこと言うもんか!
「俺も羨ましいなあ。将清って、何でもできるし、誰とでも仲良くなれるし、女の子にはもてるしさ」
 にこやかに、素直に、思っていることを吐露できる佐野は、逆に大したやつだと優作は感心してしまう。

 


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