ふとどこからかの視線に気づくと、女子や元女子らがこっちを見て何か言い合っている。
ああ、だよな、将清と元気が向かい合って笑っていれば。
優作は隣の大らかに笑う将清ときれいな顔でコーヒーをゴクゴク飲んでいる仕草までがサマになっている元気を交互に見て、心の中で嘆息した。
だがお陰で、その夜を境に将清との付き合いは元の木阿弥。
「ごめんね、ほんのちょっとしたいたずらだったんだよ。優作の気持ちも考えずに、ほんとゴメン!」
ゴールデンウイーク明け、ミドリには目の前で両手を合わせて頭をさげられ、寝てるうちにメイクでいたずらしたことを謝られた。
「いや、こっちこそ、そんなマジで怒ってたわけじゃなくて。アルコールに免疫ないし、お前らと一緒につるむとか、俺がガキ過ぎるかなとか、って」
「何それ」
途端にはあ、とため息をつかれた。
「アルコール飲めないからガキだとか、そんなんじゃないっしょ? まあ、ガキだっていうのは、飲めないなら飲めないって言った方がいいってことよ」
「そ……だな、ゴメン」
「んもう、もう、変に気を回さないでよ!」
ミドリが超美人な笑顔で笑った。
優作はつまらない意地を張っていた自分が情けなくなった。
授業、レポート、バイト。
それだけの学生生活になるはずだった。
友達とか仲間とか、そんなものを期待するつもりもなかった。
それでも、彼女を作るという目的はまだシツコク頭のどこかに置いていたのだが。
賑わしいまでの学生生活になった。
優作には最初から将清に対してバリバリに対抗意識があった。
女にはもてるわ、友達は多いわ、セレブで、自分にないものばかりを持っているやつ。
だからよけいに将清のマンションで、アルコールに不慣れな自分がひっくり返ったことが無様に思えて、将清に八つ当たりしてしまったのだ。
そのうち、将清は優作が思っていたようなただの金持ちのチャラ男ではなく、女にはバカモテだが、男女関係なく気さくに接するし、妙に面倒見がよくて、結構いいヤツだということがわかってきた。
俺が俺がではなく、さりげなくリーダーシップのとれる切れ者だとは、傍で見ていればよくわかる。
さらに、将清が帰国子女で数か国語を操り、高校では常に成績がトップという、絵にかいたようなできるヤツだということを、同じ付属高組の特に女子から耳にする羽目になった。
俺なんか太刀打ちできる相手じゃないってか。
別に一番になりたいとか、思っていたわけではない。
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