二番手以下、その他大勢のうちの一人だということは自分でもよくわかっていたつもりだ。
だから、優作としては将清の仲間うちの一人として隅の方にいたかったにもかかわらず、授業でも、学食でも、何故か優作のいる場所は将清の隣ということに決まっていて、常に優作と将清がセットのように見なされるようになっていた。
その頃には優作も諦めの境地で、むしろみんなと一緒に過ぎていく毎日が楽しかった。
いや、みんなと一緒に、というより、一人で見ても面白くないから一緒に映画みようぜとか、カレー作り過ぎたから食っていかないかとか、二人で一晩中ゲームをやっていて朝慌てて授業に走ったりとか、将清が大学に近い自分の部屋にしょっちゅう誘ってくれるのが心地よくなってきていた。
何だかただの仲間というより、友人、それも特別な友人と思ってくれているような気がして。
いい気になっていると、またしっぺ返しを食らうぞ、という臆病な自分もいたのだが、そのうちどこかへ引っ込んでしまった。
そんな時、あの出来事があった。
ミドリや琴子の他に、芽衣が連れてきた穂香と千秋という明らかに将清目当ての華やかめな女子もいて、将清と優作、元気、あと何人かの同級生も一緒の大人数グループで飲みに繰り出していた。
いつもは大学の近くの居酒屋あたりだったのだが、その夜は芽衣や穂香たちのリクエストでお洒落なところに行こう、となって、優作はあまり気乗りがしなかったのだが、ミドリたちが楽しそうなのを見て、ここで自分が一人抜けるのもどうかと結局ついて行った。
六本木駅に近いその店は確かにお洒落で大人な店という感じで、優作はちょっと気後れしたものの、将清が後ろにいたので中に入らざるを得なかった。
「ほら、ノンアル」
優作の気持ちがわかったかのように、将清はグラスを差し出した。
「全然飲めないってわけじゃないぞ」
ちょっとたてついてみるものの、「俺んちならいいけど、こんなとこで寝ちまってもらったらこっちが困る」などと笑う将清を睨みつけながら優作はグラスを受け取った。
「ま、あんまり俺もこの店好きじゃないな」
ボソリと将清が言う。
「え?」
「ああ、いや、タチの悪そうな連中もいるみたいだからな」
「タチの悪そうな連中って?」
気になって優作は聞き返した。
「いや、何となく」
優作は言葉を濁してジントニックを飲み干した。
「ねえ、将清ってずっとニューヨークにいたの?」
「友達もあっちにいたんだよ、あの子。懐かしいから話したいって」
いつの間にかその店で将清目当ての女子が増殖していた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます