穂香と千秋が将清の腕を取って、その女子のところに行ってしまうと、優作は何となくつまらなくて、ノンアルだというそのカクテルを口にした。
ミドリと芽衣は元気と楽しそうに話している。
一緒に来た男たちは店で出会った女の子をナンパしかけている。
カクテルは口当たりはよかったのだが、優作は将清と離れてしまうと手持無沙汰なだけで面白くもない。
するとそこへ元気の用心棒も現れて元気を探しているのに優作は気が付いた。
その時だった、突然、将清が隣にいたカップルらしき二人のうちの男の腕を捻り上げ、グラスが落ちて派手に割れる音がした。
優作がはっとして駆け寄ろうとすると、将清が何か喚いている男の腕を掴んだまま、店を出て行こうとしている。
何だよ?!
不安な面持ちで、優作はあとを追った。
外はさっきから降り出していた雨が強くなっていた。
店から走り出した優作が辺りを見回すと、将清が先ほどの男に殴りつけている。
「将清!」
驚いて優作は叫んだ。
「将清! おい、やめろ!」
体格の差は歴然としていて、将清の腕でそれ以上殴り続けると男が死んでしまうのではないかとさえ思われ、優作は将清を止めにかかったが、逆に跳ね返された。
「止めて! 誰か将清を止めて!」
後ろから走ってきたミドリが声を張り上げた。
やがて元気も店から飛び出してきた。
「おい、将清! もうやめろって! 死んじまうぞ!」
だが跳ね飛ばされて優作が茫然と腰を抜かしているうちに、将清の腕を掴んで男から引きはがしたのは元気の用心棒だった。
「警察、呼んでやってもいいぞ」
用心棒が倒れている男に向かって言うと、男はそれでもよれよれになりながら立ち上がり、その場から立ち去った。
元気がちょうど通りかかった空車のタクシーを停めると、用心棒が将清をタクシーに押し込み、そのあとからミドリが乗り込むと、タクシーは雨の中を走り去った。
「大丈夫か? 優作」
元気に助け起こされた優作は、いったい何があったのかわからないまま、まだ茫然と立ち竦んでいた。
「優作、大丈夫? 元気もずぶぬれじゃない!」
芽衣が声をかけてきた。
「あのさ、俺、こいつ送っていくけど、わりい、女の子ら、帰れるか? 今の騒ぎで警察でもきたら厄介だし」
「ああ、あたしらは平気。優作のことちゃんと送ってやって?」
「Copy!」
優作は元気に抱えられながら少し歩いたが、頭のパニックがまだ収まらなかった。
用心棒がもう一台タクシーを停めると、元気は優作を奥に押し込み、自分も乗り込んだ。
助手席に乗った用心棒が、大学の近くの地名を運転手に告げると、車は走り出した。
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