ひまわり(将清×優作)3

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 学生時代同じゼミでともに過ごしたのは元気も一緒だ。
「何で? いつもいつもあんなやつと一緒にいてたまるか」
 ついむかつき口調になってしまう。
「喧嘩か?」
 元気が優作の顔を覗き込むようにして訊く。
「だから……」
「元気、アイスオレ二つね」
 優作が何かいう前に紀子がオーダーを伝えたので、元気はカウンターの中に引っ込んだ。
 元気がそんなふうに訊くのももっともな話かもしれない。
 大学時代から雰囲気が華やかな存在で、人たらしなどと噂もあった元気とは同じ学部で何となく馬が合い、就職してからも同じ会社の同僚よりも元気と話すことが多い。
 ああ、そう、ついでに将清もいるが。
 迷惑メールがひどくて、携帯を変えたとともに番号もメルアドも変えたことを将清に話すのを忘れたら、ある日、いきなり何で言わないんだ、という文句のメールが将清から入っていた。
 元気から聞いて知ったらしい。
「じゃあね、元気、またくるね」
「バイバーイ」
 八人の女の子の集団が出ていくと、店の中の空気がやっと落ち着いた。
 BGMのブランデンブルグ協奏曲も、何だ、流れていたのか、とようやく気が付く。
「今日、来たのか? 車? バイク?」
 元気が訊ねる。
「バス」
「バスぅ?」
 元気がちょっと呆れた顔をする。
「新宿から直行便ってのあるじゃないか。それ。始めは実家に直接行くつもりだったんだけどさ、この町行がちょうど来て、席に空きがあるって言うから」
「お前、それ衝動的って言わないか? 家の人とか待ってるんだろ? だからスーツなんか着てるのか」
 半袖のシャツだし、上着はさすがに脱いでいるが、猛暑の東京でスーツを着ることを考えれば、この街で上着を着て歩いてもさほど不快になることもない。
「バス、M市行きも出てるし帰ろうと思えばすぐだ。しかし、何であんな山道なのに首都高並みに混んでるんだよ、しかもすげぇ細い道とかあるのにさ」
「首都高は大袈裟だろーが。夏休みか? いつまで?」
「今日から一週間」
 ほんとに元気の作るこのアイスティーは絶妙だ。
 優作は一息に飲み干した。
「いいご身分じゃないかよ」
「別に何の変哲もない毎日だ。元気みたいにフレキシビリティに生きられるのがいいよ」
 つい、いじいじとつっかかってしまう。
「何だよ、それ」
「いや、俺なんかさ。ありきたりの男だから、ありきたりの人生送るしかないんだってこと」
「今度は人生相談か? 如何に生きるか、それが問題だ」
 フンと鼻で笑い、元気はコーヒーを淹れる。

 


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