ひまわり(将清×優作)33

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「何があったんだ?」
 優作は尋ねずにいられなかった。
「いや、将清がというより、将清の向こう隣りにいたカップルの男が女に何かクスリ渡してたらしいって、芽衣が見たって」
「クスリって……」
 優作は絶句する。
「まあ……、いわゆるクスリ? で、一平の言うには、どうもあの店、そういう連中、つまり供給するやつとされるやつらが出入りするので知られた店だってよ。一平の親って二人ともでかい弁護士事務所やってて、そういう連中の案件とかも扱っているらしくて、調査しているうちにあの店とかヤバいやつらがいるってわかってきたから注意しろって一平が言われたって話」
「そうなんだ……」
 元気の説明に、まるでドラマか映画のようなことが身近で起きていたとは、優作には思いもよらないことだった。
 でも何で、将清があんな……
「将清がタコ殴りにしていた男、売人だろうって。一平が警察呼ぶっつったら、逃げてったろ」
 男がふらふらと逃げていくのは優作もおぼろげに覚えていた。
「芽衣の話だと、男にクスリ渡されてた女もどこかに消えたって」
 優作はいきなりハードな現実を突き付けられた気がした。
 将清もそれに気づいたから男を殴ったのか。
 だけど、何かあの時、将清は尋常じゃないって感じで、一瞬見えた目が怒りで一杯だった。
 それに、ミドリがタクシーに乗せる時は、今度はまるで何も見えてないみたいに。
 優作の頭の中で、昨夜の映像が一つ一つフラッシュバックする。
 頭の中ではきついシーンばかりが繰り返され、何か胸の中もモヤモヤして、授業など全く頭に入っていなかった。
 授業が終わった途端、将清が優作たちの方へ段飛ばしで上がってきた。
「優作、ゴメン、昨夜、俺、お前に………」
「ああ、平気。それよりお前こそ、大丈夫か? 怪我無かった?」
 優作はことさら明るい調子で聞いた。
「俺は何も……」
「だったらよかった。あ、そだ、元気、昨夜泊めてもらったし、今朝、何も食べてないし、腹減ったから何か買ってくる。何がいい? 次、お前も数学だよな?」
 優作は、まだ何か言いかけた将清を遮って元気を見た。
「おう、じゃあ、サンドイッチとコーヒー、頼むわ」
「わかった!」
 そのまま将清の顔を避けるようにして、優作はカフェテリアへ向かった。
「おい、ちょ、待てよ! 優作!」
 何かに急き立てられるように廊下を速足で歩いていた優作は、後ろからあとを追ってきた将清に腕を掴まれて振り返った。
「な、いってえ! 何だよ、一体!」
 将清ははっとしたように、力任せに掴んでいた手を離した。
「お前、さっき俺を避けただろ」
「はあ? 何、言ってんの?」
 優作は将清を見上げて睨みつけた。

 


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