ひまわり(将清×優作)38

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「あのさ、むしろ俺なんか夕べ将清に一撃で吹っ飛ばされたへなちょこなやつなわけで、それこそ何も役にたちそうにない俺なんかにそんなヘヴィな話ふられてもって気がするんだけど? 元気とか元気の用心棒とか、ああいう頼もし気なやつに相談するのが妥当じゃないのか?」
「やっぱ全然、わかってない!」
 優作の少しひねくれた言動にミドリが声を荒げた。
「腕っぷしがどうとか、そんなんじゃないのよ。将清の心の中の問題で……」
 ミドリは辛そうな顔をした。
「…………それなら、ミドリが一番わかってるわけだろ? ずっと将清のことを見てきたのはミドリなんだから……」
「あたしじゃダメなんだよ!」
 拳を握りしめてミドリが強く言った。
「あたしがどんなに……将清のこと好きでも、ダメ……なんだ……」
 それがミドリの本音だと、優作は理解した。
「え……? だって、やっぱ付き合ってるんじゃないの?」
「だから、違うって! もう、とにかく、将清のこと見捨てたらただじゃおかないからね!」
 そうタンカを切ると、ガタン、とミドリは立ち上がり、「それから、優作、俺なんか、とか、口にするのやめなさいね!」と言い残し、会計を済ませて颯爽と店を出て行った。
 何だよ、それ?
 何で俺、ミドリにそんなこと言われなきゃいけないんだよ!
 優作はミドリが出て行ったドアを呆然と睨み付けた。
 ミドリとは割といい関係のように思っていたのに。
 しばらく一人ぼんやりと座っていたが、ようやく席を立ち、冷え切った弁当の袋をぶら下げてトボトボとアパートへ向かった。
 電車なら一駅、歩いても十五分ほどのところにあるアパートの二階に優作の部屋はあった。
 既に一日の終わりに差し掛かっていた。
 階段を上がって、自分の部屋に向かおうとした優作は、ドアの前にうずくまっている人影にぎょっとして足を止めた。
「よう……」
 気配に気づいて立ち上がった男は、耳からヘッドフォンを外すと優作に頼りなげな笑みを向けた。
「将清……」
 状況を把握できずに、優作はしばし立ち竦んだ。
「どうして……」
「今夜、いい月夜だろ? 何か、お前の顔見たくなって」
 将清は笑った。
「何だよ、それ………」
 ミドリといい、将清といい、予測不能な言動や行動に首を傾げ乍ら、優作は鍵を取り出してドアを開けた。
「いつから待ってたんだよ、ラインすればいいだろ」
 中に入って、優作が文句を言った途端、将清は背後から優作を抱きしめてきた。
「悪い……しばらくこのまま、いいか……」
 驚いて身動き取れない優作に、将清が凍えるような声で言った。

 


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