北海道から東北、北陸、関西、四国、結局卒業までに九州を除いて夏休みや春休みを使って日本のあちこちを二人で廻った。
キャンプや安宿、山奥の温泉を見つけるのも将清の得意とするところだった。
ただし、その土地その土地の美味いものは逃さないのが信条で、特産品は必ず祖母やミドリや元気ら友達にも宅配便で送っていた。
将清のどんなことでもとことんやらなくては気が済まない、やればできる的なところがまた、つい俺なんかで諦めてしまいがちな優作には頭が下がる思いがした。
二年の時の学祭には実行委員会が呼んだ芸能人のステージよりも、将清の一声で設営から照明までを自分たちで実行した元気と一平、それにみっちゃんが結成したバンド『GENKI』で参加したライブは、SNSを使ってのアピールによって関東圏から続々と学生のみならず音好きが集まってきて大々的に成功をおさめ、『GENKI』はやがてインディーズで半端ない人気を得ていった。
またミドリが先導して行った壁から塀から建物の中へと続くペインティングは日本のアート業界からも注目を浴びた。
二年の時から優作が出版社のバイトを紹介してもらえたのも将清の知り合いがいたからだ。
だが時々、いろいろなことがあまりにうまく行き過ぎているような気がして、それはやはり将清のお陰なのだと、優作はあらためて思わざるを得なかった。
もし自力だけで何とかしようとしても、こうもうまく事が回るはずはないと思われた。
それは優作の中では悔しくもあり、諦めでもあった。
ただ一つ、思うようにいかなかったのは、彼女を作るという進学時からの優作の密かな目論見だった。
将清と一緒の輪の中にいれば、たくさんの女の子と知り合うことはできた。
けれど、大方は将清目当てで、そればかりは優作だけではない、他の男たちも同じようなものだった。
それでもあいつが? というやつが彼女を作っていたり、いつの間にかバイトで知り合ったとか学外でゲットしていたりした。
「だからお前、将清にくっついてたら、いい女寄ってきても結局彼女ゲットはムリじゃね?」
なんてナンパして彼女ができたと得意げなやつに笑われたりもした。
ミドリや芽衣は入学当初からの付き合いなので、今更お互い、友達の範疇から出る気にはなれなかった。
琴子は二年の時にとっくに他の学部から彼氏をゲットしていて、卒業時まで別れる気配はなかった。
元気やその用心棒とみっちゃん、浅野は『GENKI』のライブであちこち飛び回っていたが、授業のと兼ね合いに元気も頭を悩ませていた。
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