いくばくかの寂しさはあったものの、職場が違ったからといって壊れるような友人関係ではない。
ようやく将清の手を借りずに一人で立って歩くことができる、それは優作の切なる願いでもあった。
だが、研修先でまた将清と顔を合わせた時の驚き。
考えてみればバイトは出版社に将清の知り合いがいたからこそ決まったものだった。
優作は同じ会社に就職するのを黙っていたことを将清に怒ったものの、それこそ今までのようにいつも一緒にいるわけではない。
そう自分に言い聞かせてこの二年ほどをなんとかやってきた。
だが、次第に焦りのようなものが優作の中で大きくなっていった。
見合いをしたのは、帰省した時に親にせっつかれたこともあった。
それなのにどうしようもないジレンマが優作を時折襲う。
仕事でもやはり陽の光を浴びるところに将清はいた。
既に今の編集部で大幅に伸ばした売り上げや担当した記事が絶賛されたことなどで社長賞までもらっている。
そんな将清に対する羨望の想いはいつもある。
だがそれよりも、社食で笑い合っている同じ編集部の女の子だけでなく肩を叩き合っている同僚とのようすを垣間見た時にはっきりと感じたのは嫉妬だった。
入社したと同時に将清に、普通の友達でいたいと言ったのは優作の方だった。
今度は、俺は少し楽に生きたい、等身大の自分でいたいとも宣言して、将清に背を向けた。
なのに、ひどくきつい。
好きだっていう、ずっと心に置きっぱなしにしていた思いが身体中から溢れ出す。
こんなの、どうしたらいいんだよ。
その時、ミドリの言葉を思い出した。
あたしがどんなに……将清のこと好きでも、ダメ……なんだ……
それは今の自分の想いでもあった。
あれは冷静過ぎるミドリのほんとの叫びだったのだろう。
ミドリは俺に将清をバトンタッチすることで、いろんな意味での重荷を下ろしたのだろう。
じゃあ俺はどうすればいい?
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