一平が助手席に座り、将清のマンションの住所を運転手に告げると、タクシーは走り出した。
一平は将清をベッドまで引き摺って行くと、「何かあったら連絡しろ」と優作に言い残して帰って行った。
真夜中三時を過ぎた頃、眠っていたと思っていた将清がむくりと起き上った。
優作の方がいつの間にか眠っていたらしい、将清がバスルームに入って行くのに気づいて、はたと立ち上がった。
「おい、大丈夫か?」
将清はしばらくバスルームから出てこなかった。
「将清」
シャワーでも浴びてるんならいいけど、としばらくドアを見つめた。
と、ドアが開いた。
「おい、何やってる?」
上から将清の声が降って来た。
バスルームのドアの前に座り込んでいた優作は顔を上げた。
「や、お前が大丈夫かと思って」
「ああ、飲み過ぎた、寝るぞ」
将清は無造作に髪をかき上げると、不機嫌そうな顔のまま優作の手を掴んで立ち上がらせて、たったかベッドへ向かう。
「ちょ、将清、いてえってば」
優作はベッドに放り出されて突っ伏した。
そこへいきなり将清が覆いかぶさった。
「うーわ、重!! ギブギブ!!」
喚く優作を将清はなおもベッドに押し付ける。
「ちょ、将清って! 苦し……」
優作は泣き笑いで訴える。
すると将清はゆっくりと身体をおこす。
優作は大きく息をついて仰向けになった。
将清は優作を見下ろしていたが、目の焦点が合っていないようだった。
「将清、ほんと、大丈夫か?」
優作は将清を見上げて言った。
「大丈夫……じゃない……」
「え、おい、将清、ここで吐くなよ!」
「ああ……」
「え、おい、まさ……」
また将清の顔が降りてくる。
次には目の前が暗くなった。
何が起こったのか優作は理解できなかった。
将清は優作の唇を塞ぎながら、またベッドに押し付けた。
「まさ…」
優作は将清の胸に腕を突っ張るが、力で優っている将清はやめるようすもないどころか優作にキスを浴びせ続ける。
「将清っ!」
「…大丈夫じゃない……大丈夫じゃ……」
繰り返す言葉は何か泣きそうな気配を含み、優作を抱きしめてキスをやめようとしない将清に、優作の胸の奥で震えるものがあった。
それから将清がする何もかもを許してしまったのは、ただ流されただけではない。
頭の片隅でミドリの言葉が呪縛のように優作から力も理性も奪っていった。
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