ひどい後悔に襲われたのは翌日のことだ。
「優作、朝めし」
湯気の立つ朝食が載ったトレーを持った将清が寝室のドアを開けておそるおそる声を掛けた。
「優作、おい、大丈夫か?」
優作が返事をしないので、将清はテーブルの上にトレーを置いてベッドに駆け寄った。
「……大丈夫じゃない……」
昨夜とは真逆に優作は絞り出すように答えた。
実際、ちょっと身体を動かすと腰の鈍痛が身体中に広がっていくような気がする。
「大体お前があんなでかいやつ、ケツに突っ込むからだろ!」
喚く声が掠れて、余計に優作は腹が立つ。
「でかいって、お前見たのかよ、目つむってたくせに!」
「見なくてもわかる! あんなクソ痛かったのに!」
「痛かっただけじゃないだろ!」
一瞬怯む優作だが、「とにかく痛かったんだよっ!」とシーツを被る。
くっそ、初めてがこいつとなんて!
痛かっただけじゃないとか、よく平気で言える!
マジ、痛いだけじゃなかった、かも知れない。
何度かイかされたのは事実で………。
クッソ恥ずい!
優作は心の中で喚き続けた。
「おい、優作、メシが冷める」
優作は唇を噛みしめていた。
「腹減ってんだろ」
優作はシーツから顔を出し、起き上がろうとして、「って!」と喚く。
将清は慌てて優作を支える。
「いいって!」
拒否る優作を無視して、将清はトレーを持ってきて優作の脚の上に乗せた。
バターが溶けたトーストとカリっと焼けたベーコンとふわっとしたタマゴ。
牛乳にコーヒー。
見ただけで腹が鳴った。
がっつくように食べる優作を見て、将清はクスリと笑う。
あらかた食べ終えて、コーヒーに口をつけた時、やっとアレっと思う。
俺、こんなん着替えたっけ?
第一Tシャツは将清のものだ。
って、将清が着替えさせたのか?
って、他にいないよな。
「これ、持ってくから、もうちょっと寝てろ」
将清は空になった器を見てトレーを取り上げると、キッチンに持って行った。
優作は横になって、またシーツを被ると、いつの間にか眠ってしまった。
それから、将清と優作の関係が変わるようなことはなかった。
少なくとも表向きは。
授業が終わると大抵将清は優作を自分の部屋に連れ帰った。
みんなで将清の部屋に押し寄せても、優作は一人残った。
当たり前のように将清は優作に手を伸ばした。
優作は将清に抗うこともなくなった。
どころか、将清から離れることすらできなくなった。
ただ、みんなが知っているはずもなかったのに、優作は将清とのことを知られているのではないかと一人疑心暗鬼になったこともある。
だが、そのうちみんなはずっと変わらない付き合いなのだとわかってきて、優作は恐れを忘れた。
ただ一人、同じように見えてミドリだけは優作への対応が微妙に違うことを優作は感じ取っていた。
何か憑き物が落ちたかのように穏やかになっていた。
まるでバトンは渡したよとでも言うように。
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