元気は何も言わず、グラスのワインを口にしながら、優作を見ている。
「こんなのフツウじゃないって思ってたけど、あいつに誘われると、ダメで………。ってか、ミドリが俺にバトンタッチしてったから、俺はあいつを拒否ることができなかった」
「何でそこにミドリが出てくるんだ?」
怪訝な顔で元気は優作を睨む。
「将清、ニューヨークにいた頃にかなりな精神的ダメージ受けて、時々トラウマで感情がコントロールできなくなって、ミドリは高校まで将清を受け止めてやってたって。でもミドリ、将清のこと好きなのに、自分ではダメだって言って、俺に、バトンタッチして、見捨てたら許さないって、ミドリ、怖い顔で………」
ぽつり、ぽつりと切れ切れに優作は説明した。
「ああ、なんか昔、将清、売人タコ殴りにしたことあったな。あれってそういう重いもん背負ってたからってわけ? つまり何、ミドリ、そういう時、将清のこと高校ん時は身体で慰めてやってたけど、ミドリの方がきつくなって、お前にバトン渡したって? 身体で慰めてやれって? だから将清と寝てやったと」
わざと意地の悪い言い方で元気は優作に詰め寄った。
「そんなんじゃない! そんなんじゃ……いや、ミドリの脅しが頭から離れなかったってのもあったけど、俺は、拒否れなかったんだよ……俺、やっぱあいつのこと、好きだったから。でもさ、……自分はいろんな女の子と遊んでるくせに、あいつ、ずるいって思って……。大学のコンパの時だってそうだったろ? すぐ横から口出してきて、せっかく俺と話してた女の子かっさらって行きやがって。あいつが出てきたら、もう女の子の方も俺なんか眼中にないよ」
優作は肩を落として自嘲する。
「………将清は、俺から見たらいつも太陽の光を浴びてるひまわりみたいな存在で……はたで見ているのもやっぱきつくなって、俺だけ好きでもさ………。だから、卒業を機に、普通の友達でいたいって言ったんだ」
将清にそれを告げた時、将清も、「わかった」って言ったのだ。
「ミドリの脅しをいい加減断ち切ろうって、将清ももうあんな発作的なこともなくなってたし、昔のトラウマなんか断ち切ったみたいだし、それでいいと思ってたんだ……それが蓋を開けたら、あいつ同じ会社でさ、やっぱり会社でもできるやつで、みんなの注目浴びて、将清のことなんかどこかしらで耳に入ってきて、いちいち俺、動揺してさ……」
はあと大きな溜息をついて優作は続けた。
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