「お前、嫁もらわなきゃとか、将清に女がいるとか、違うだろ? お前、将清が好きなんだろーが? だったら、とっととやつにそう言えばいいだろ。それができないんなら、すっぱり諦めちまえ! わかったか?」
「う…ん」
元気の勢いに押された形で、優作はコクリと頷く。
「ったく、煮えきらないやつだな。………まあ、俺も人に言えたギリじゃないんだが」
元気はフンと鼻で笑う。
「現実社会ってのは、自分で行動しないと前に進まないの。待ってたって、王子様が迎えにくることもないし、正義のヒーローが駆けつけてくれるなんてこともないの」
そう結論づけると、元気は、さてと、と立ち上がる。
「まあ、一晩飲んだくれて、あとはすっきり頭冷やして考えるんだな」
「え…帰るのか?」
殆どすがるような目で見あげる優作は、すっかり泣き上戸になっていた。
「うーん、そうだな、俺を嫁にもらうんなら、せめてスイートとってくれなきゃ」
そんな冗談もかわせない優作の目からまたポロリと涙が零れ落ちる。
「リュウの散歩もあるし。それに、違うんじゃないのか? そういう目で見る相手は。携帯呼び出してみろよ。将清のやつが飛んできてくれるかもしれないぜ」
バイバーイ、元気はにっこり笑ってドアを閉める。
「もう、十二時か。いい加減飲んでたんだぁ」
携帯を見て、元気が顔を上げた、その時。
猛然とこちらに向かってくる長身の男がいた。
「…いたよ…待ってるだけのやつのところに駆けつけちまうバカなヒーローが…」
唖然としている元気に、その男が気がついた。
「元気! あいつ、そこにいるのか?」
「まずは教えてやった礼をいうとこだろ? 将清」
腕組みをした元気は将清を詰る。
泣き上戸の優作に白状させながら、仕方なく優作がここで泣いていると将清にラインしてやったのだ。
「お前、さっきは優作が来てるなんてことひとっことも言わなかったじゃねーか!」
途端声高に喚く将清にとりあわず、元気は続ける。
「優作をあんなに泣かせてるお前に会わせていいもんか迷ったんだよ」
元気はたまに降ろしている髪を無意味にかきあげた。
「見合いして軌道修正しなけりゃってさ」
「何だと!? 優作のやつ、おかしな誤解して、また俺に対抗したつもりで結婚するとか冗談じゃない!」
大きな男が情けない顔をする。
「かっ飛んできたわけやね」
元気が茶化す。
「ほんとに冗談じゃなくてさ…そこ通してくれないか」
情けない顔の将清は、今度は元気に懇願する。
元気は将清の前に立ちはだかったまま、ドアをノックした。
「俺にキスしたらな」
怪しい光を見せて元気の目が将清を見上げ、将清の首に元気の腕が絡む。
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