ひまわり(将清×優作)7

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「仲良くなんて、いう歳かよ」
 そうだった。
 あの頃はまだ元気の父親も健在だった。
 バイクが好きだった優作は、入学と同時に家族に買ってもらい、通学や帰省にはバイクを使っていた。
 そのうち、将清もバイクを買ったというので、よくつるんでツーリングに行くようになった。
 元気が帰省していたのを知っていて、ツーリングの途中でこの街に寄ったのが二年の夏休みだった。
 標高千メートルの温泉というのを元気から聞いて、二人で行ったんだっけ。
 あちこちにある温泉はライダーにとってはオアシスのようなものだ。
 山とか雄大で近くて、空気が違くて。
 途中、サルを見つけたりして、近づきすぎるなよ、というのに、将清はどんどん近づいて携帯で写真を撮りまくっていた。
 それから野麦峠を越えて木曽へ出て………、すごく楽しかった。
 あの頃の写真は山ほどある。
 みんな将清が撮ったものだ。
 安い宿を利用することもあったが、夏は二人でキャンプだった。
「そうだな。こないだ、キャンプで事故があったけどさ、俺たちよく川原でもキャンプしてた。雨降ってもさ、あいつが大丈夫だ、なんていうと、妙にそんな気がしてさ。運が悪かったら今頃、俺たちいなかったかもな。そんなに甘いもんじゃないだろ、自然って」
 優作は将清の頼もしげな顔を思い浮かべた。
「自然はあるがままにあるんだ。だから自然っての。にしたってさ、お前たち二人、いつもセットで見てたからな、俺だけじゃなくて、ゼミの奴らも」
「セット…ってなぁ…ただトロい俺が将清に手引っ張ってもらってたってだけなんだ」
 将清が来いと言えば行ったし、やろうと言えばやった、そんな感じでずっと学生時代を過ごしてきたのだ。
「俺は、将清と行動するのが精一杯だったけど、あいつは余裕でたくさんの女の子と付き合ってた。俺にはそんな余裕なかった」
「何、将清と友達やってきたこと、後悔してるとか?」
「そんなんじゃ……いや、ある意味、そうかもな。要はさ、平々凡々な人間が、抜きんでた人間と背伸びしながら付き合ってた、そういうこと。だから、ここいらへんで、分相応の生き方に軌道修正した方がいいかなって思ってさ」
 元気はしかし納得行かないという顔で酒を口にする。
「お前は何か買い被ってるよ。俺なんか、こう見えても裡々ではすんげぇ葛藤があったりするわけやね? わかる?」
 いつになく神妙な顔で元気が言う。
「そいでもって、へらへらやってるように見えて、将清なんかも色々悩んでるんかもしれないって」
「まあ、多少の悩みくらいあるかもな、あいつにも」
 優作は調子にのって飲みすぎたらしく、それからの記憶はない。

 


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