石川が受話器を置くと、ややあって電話が鳴り、女子社員が出た。
「編集長、広瀬さんって小笠原さんのマネージャーから」
「はい、石川です」
受話器を取る石川に目をやりながら、女子社員が山野に向き直る。
「でもさ、仕方ないよ、今、一番人気だもん、彼」
「まーねー、ドツクんだったら、人気が下火になった頃を狙ったら? 山野くん」
傍の女子社員たちがにやにやからかう。
「うっせーな。いつ下火になるんだよ」
「さーあ、十年は持つかな~。結構ドラマ実力発揮してきたし」
「だよね、顔だけじゃないってとこ、見せてるよね」
嬉々として話す女子社員たちの目も輝いている。
「ったく、てめーらみてーのが、やつを煽ってんじゃないかよ」
どのみち、彼女たちもカッコいい男が好きなのだ。
山野の悲哀など、てんでわかってもらえそうにない。
「じゃあ、工藤さんによろしくお伝えください。広瀬さん、でしたわね? 確実に五時にお願いしますね」
石川が受話器を置くのを待って、山野は立ち上がった。
「小杉さんと工藤さん、志村嘉人に同行してニューヨークですって。ニューヨークで初舞台だったわよね。筒井明彦演出の『ハムレット』。観たいなあ。私は小笠原より志村の方が好きだわ。重厚な雰囲気が出てきたし、彼」
「石川さんの好き嫌いに関係なく、うちの雑誌は、志村よりまだまだ小笠原なんですよ」
山野がぶーたれる。
「はは、そうだったわね。でも、広瀬って新しいマネージャーかしら、礼儀正しくてしっかりしてそうだったわよ。首に縄をつけてでも連れて行きますだって」
「甘いっすよ、あんなヒヨッコに、小笠原が扱えるもんっすか」
苦々しそうに山野は息巻く。
「あら、でも広瀬ってどっかで聞いたような~」
まだまだ文句が出てきそうな山野に応えるでもなく、石川は呟いた。
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