バレンタインギフトはそれからもいくつか届いた。
例によって、加絵やルクレツィア、それにアメリカの佳乃からも工藤宛に大きめの小包が届いている。
大きさで競ってるのか?
バカなことを考えていると、「あら、良太ちゃん宛てよ」と鈴木さんが宅配業者から受け取った包みを見た。
「あ、どうも、すみません」
かおりからもさっきチョコレートが届いていたが、今度は業者さんからだろうか。
鈴木さんから、多分ボトルだろう包みを渡された良太は、差出人の名前を見て、鈴木さんがちょっと首を傾げたわけを瞬時に理解した。
「沢村ぁ~?」
梱包を解くと、中から現れたのは、しっかりバレンタイン用のラッピングが施された日本酒と有名ショコラティエのバレンタインチョコで、ご丁寧にも直筆でボトルにメッセージが書いてある。
「愛を込めて! 沢村智広」
ハートマークつきのボトルを良太はすぐにラッピングに戻した。
「ったく、こんなんで埋め合わせようたってそうはいかないんだよ!」
そんなことを良太が口にしてすぐ、デスクに置いた携帯がワルキューレを奏で始めたので、慌てて電話に出た。
「はい、お疲れ様です」
「ロケはどうだった?」
工藤は今札幌にいるはずだ。
「はい、何とか、例の二人がまた見解の相違とかで三十分ほど中断した程度です」
「フン、あんまり長引かせるなよ。これから釧路に移動して今夜はそっちに泊まる。何かあったら携帯に入れろ」
すぐに切りそうな気配に、良太は慌てて「あの!」と言った。
「何だ?」
「いろいろたくさん、プレゼントが届いてますけど」
「プレゼント?」
訝しげな工藤の返答に、「明日はバレンタインデーなので」と良太は答えた。
「んなもの、鈴木さんにやるとか、オフィスで食えばいいだろ」
「いや、チョコばかりじゃないし、工藤さん個人宛に届いたもの、お部屋に運んでおきますか?」
「運ぶ前に開けて、何が入っているか確かめろ。去年、クローゼットに押し込んだものの中に何か腐るものが入っていて、平造がそのあたり全部捨てたとか文句言っていたからな」
「え、でも加絵さんとかルクレツィアさんとかからのものもありますけど」
良太は今まで工藤といろいろあった名前をわざと口にする。
「とにかく全部開けて確認して、食い物が入っていたら食うか、分けろ! 食い物でなくても欲しいやつにやればいい!」
イライラと怒鳴り声を返すと、工藤は電話を切ってしまった。
「ちぇ、何だよ、その言い草。贈った人の気持ちもちょっとは考えてみろって」
切れた電話にブツブツ文句を言っていると、ドアが開いてすうっと冷たい風が吹き込んだ。
「こんにちはぁ」
明るい声がオフィスに響く。
「直ちゃん、いらっしゃい。今日は佐々木さんのおつかい?」
オフィス佐々木の池山直子はスキー合宿の時も和み系だとあちこちで言われていたが、確かに彼女の笑顔は気持ちを上昇させる摩訶不思議なところがある。
「今日はプライベートだよぉ。明日バレンタインだけど、土曜日だから、直から良太ちゃんへ」
直子は抱えていた淡いラベンダー色のバラの花束とチョコレートらしい包みを差し出した。
「え、俺に? うわ、すごいね、この花束」
「今年は、お花にしたんだ。プラグインにはカラーにしたの。さっき寄ってきたんだ」
「ありがとう。俺、花なんかもらったのって初めてかも。何か嬉しい」
「ほんと? よかった」
「でも、どうしよう、こっちのテーブルに飾るのがいいか。鈴木さん、花瓶とかありましたっけ?」
鈴木さんも微笑ましそうに二人を眺めていたが、「ありますよ、ちょっと待っててね」とキッチンに行った。
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