「佐々木ちゃんにもお花にしようと思ったら、沢村っちに先越されちゃって、今回はチョコとお酒にしたんだ。今朝、も、すんごいカサブランカの花束が届いちゃって、もちろんチョコとそれ以外にD&Gのジャケットとかワークシューズとか。絶対佐々木ちゃん似合いそう。でもって、バレンタイン用のカードにしっかり、手書きのラブラブなメッセージも入ってるし」
良太は苦笑する。
「あいつ、極端だよな。興味ない相手にはひとっこともしゃべんないくせに」
「でも、めちゃストレートでわかりやすいよね。佐々木ちゃんってば、何で実名で送るんだって怒ってたけど、まあ、あたしにもついでにチョコとD&Gのゲキカワブローチ送ってくれたの、ほら。お世話になったお礼だって」
直子はコートの胸につけた、音符のモチーフのブローチをちょっとつまんで良太に見せた。
鈴木さんが大きめの花瓶を持ってくると、直子は大量のバラをきれいに生けた。
「あら、ステキね。可愛くてオフィスが明るくなった気がするわ」
オフィスには業者を頼んでドアの近くに花をアレンジメントしてもらっているが、どうしても観賞用という感じになってしまう。
鈴木さんが良太の母親の焼いたチョコレートケーキと紅茶を直子に持ってきたので、コーヒーブレイクになった。
「わあ、美味しいよ、これ!」
一口食べて、直子が嬉しそうに言った。
「よかった。もらうばっかじゃ申し訳ないし」
「ああ、でもね、直もチョコ好きだし、女子同士でもチョコプレゼントしあったりするの」
「へえ、そうなんだ」
女子同士のやり取りなら可愛いかもしれないが、ヤロウ同士でチョコのやり取りとか、かなり薄ら寒いよな。
変な想像をして、良太は自分でげんなりした。
ああ、でも、藤堂さんは別か。
なぜかあの人の場合、違和感がない。
「ご馳走様。じゃ、またね、良太ちゃん」
バイバイ、と直子が出ていってから、良太はとりあえず昨日から考えていることを実行しようという気になった。
「鈴木さん、俺ちょっと用があって、少し早めだけど昼行って来ていいですか?」
「いいわよ。今日は朝、お弁当買ってきたから、ごゆっくり」
時間は十一時をちょっと回ったところだった。
地下鉄で外苑前に出ると、目当ての店はすぐ見つかった。
たまには酒ではないものを工藤にプレゼントしてみようかどうしようかと、昨夜ネットでいろいろ探したりしたのだが、今ひとつ逡巡していた。
良太を後押ししたのは沢村のプレゼントだ。
たまには、沢村みたいにストレートにやってみようかと。
父親なら二万云千円也のつるしのジャケットでもいいが、工藤にはそんなわけにはいかない。
かといって高級ブランドのスーツやらなんかはとても手が出ないし、手が届きそうなネクタイは工藤からはもらったことはあるが、自分が、しかもバレンタインなんかに贈った日には、つけてくれたら嬉しいが、それはそれで何やら気恥ずかしい。
自分が買えるそこそこのもので、工藤の持っているものに混じってもわからないようなものがいい、ということで色々考えた挙句、結局サングラスになった。
サングラスならいくつあっても構わないだろう。
あの男がサングラスをするのはカッコづけでも何でもなく、ただ瞳の色が薄いので眩しいらしい。
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