このオフィスのテーブルも、チョコレートやらプレゼントの包みやらで埋もれていた。
「明日、東京でもまた雪降るみたいですよ」
コーヒーを持ってきた浩輔が言った。
「そんなことを聞くと、また寒うなるな」
スキー場では元気一杯、良太をご指導くださった勇姿とは別人のように、隣に座っている佐々木が言った。
『スヴェーリエ』で美味しいサンドイッチやパンを仕入れてプラグインにやってきた良太だが、そこに先客の佐々木がいて、少々居心地が悪い思いをしていた。
というのも、スキー合宿終盤に来ての沢村の登場に、「どうやら良太ちゃんもぐるやったみたいやな」なんて佐々木に睨まれ、空笑いをするしかなかった良太は、沢村が来ることを佐々木に黙っていたのを謝る機会を逃してしまったのだ。
さらに案の定、沢村が来たのは良太にご執心だからだ、などと酔ったアスカが言いふらし始め、かおりまでが、私たちまでごまかさなくて大丈夫、とか何とか言い出してしまい、良太は佐々木にちゃんとそのことに対する弁明もしていない。
「おや、お買い物?」
藤堂には目ざとくサングラスの入った袋を見つけられるし。
中を覗いてもいないのに、何故か藤堂には工藤への贈り物を買いました、という良太の心が見透かされているような気がして、ええ、まあ、なんて曖昧な返事をする。
「じゃあ、これ、良太ちゃんに。最近はまってるんだ、ここのホワイトチョコケーキ。多少日持ちすると思うけど、みんなで食べるといいよ」
藤堂がパティシェリーの紙袋を良太に差し出した。
「ありがとうございます。あの、じゃ、俺、そろそろオフィスに戻ります」
良太が立ち上がると、「ほな、俺も。じゃ、河崎さん戻らはったら、また連絡ください」と、こちらも藤堂にケーキの包みを持たされた佐々木が立ち上がった。
何となく佐々木と一緒にプラグインを出ることになってしまった良太は、オフィスではちょっと言いづらかったが、この場で佐々木に弁明してしまおうと、「佐々木さん!」と声をかけた。
「良太ちゃん、昼、まだやろ? どっかでメシ食うていかへん?」
良太が何か言う前に佐々木がにっこり笑った。
「あ、はい!」
佐々木が良太を連れて行ったのは、オフィスビルの地下にあるおしゃれな和食の店だった。
「ここの定食、安うて美味いんや。こないだ浩輔と一緒に入ってな」
客はほとんどが近くの会社や店の社員だろう。
昼時とあって混んでいたが、天井が高く、広い空間が息苦しさを払拭している。
片側はガラス張りになっていて、地上からの光が坪庭を明るく見せていた。
いつ話そういつ話そう、と思いながら定食を食べ終えてしまった良太だが、店のスタッフが注いでくれたお茶を一口飲んでから、「すみません、俺、佐々木さんにずっと謝ろうと思ってて」と切り出した。
「え、何を?」
佐々木はきょとんと良太を見つめる。
「いや、スキー合宿の時、沢村が来ること絶対佐々木さんに言うなって言われてて……」
「ああ、全く、無茶してくれるよな、ほんま。でも別に良太ちゃんのせいやないから」
「いや、それと、あの、アスカさんらが酔っ払って沢村のこといろいろ。あれ、ただの邪推ですから。沢村も思いつきで変な話持ちかけただけで」
懸命に言葉を紡ぐ良太を見て佐々木はふっと笑う。
「思いつきやなかったて、言うてたで?」
「え……?」
「あの時はほんまに良太ちゃん連れて、アメリカ行くつもりやったて」
一瞬、良太は言うべき言葉が見つけられなかった。
沢村ぁ! お前、何を佐々木さんに話したんだっ!
心の中で良太は叫び出したくなった。
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