花のふる日は 75

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「誰かと思ったらお前か。性懲りもなく、まだそんなことを言っているのか? そのうちストーカーだとかで通報されても知らんぞ」
「うっせぇんだよ! どこへやったと聞いてるんだ!」
 からかい半分の工藤に京助は声を荒げた。
「フン、いつもの伊達男ブリが台無しじゃないか。千雪には最後通牒言い渡されたんじゃないのか? 諦めの悪いヤロウだな」
「貴様に言われる筋合いはない!」
 案外、と工藤は京助の目を見て思った。
 案外こいつ、まともに考えているのかもしれない。
「しつこいのは嫌われるだけだぜ?」
「千雪はどこにいる?」
 工藤の揶揄に反発するでもなく、京助は切り返した。
「とりあえず、千雪の意向も聞いてみてからにしたらどうだ?」
 それには京助は何も答えず、睨みつけてくる。
 仕方なく、工藤は携帯で軽井沢を呼び出した。
「俺だ。先生はいるか?」
 だが、平造の答えは意外なものだった。
「小林さんなら、先ほど実家に戻られると言って出られましたが」
「車でか?」
「いえ、列車でと言ってました」
「何時頃だ?」
「五時過ぎでしたが」
 工藤は携帯を切ると、京助を見た。
「実家に戻ったらしいぞ」
「実家?」
 怪訝そうな顔で京助は聞き返す。
「先生の行動はお前にも把握できないようだな」
 工藤はニヤリと笑う。
 京助はすると苦々しい表情のまま「邪魔したな」とコートを翻し、オフィスを出て行った。
「あの方、風邪でも召してらっしゃるんじゃないかしら。何だかお熱がおありのようでしたよ」
 二人の言い争いの間もだまって仕事を続けていた鈴木さんがポツリと言った。
「そうでしたか? ま、大の男だ、ちょっとやそっとじゃ倒れやしない」
 さて、どう転がるか、高みの見物といくか。
 工藤は面白そうに笑みを浮かべた。


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