さすがにこの熱で車を運転するのは、しかも京都まで飛ばすのははばかられた。
風邪でぶっ倒れるなど、京助にしては大いに珍しいことだった。
鬼の霍乱か?
京都に向かう新幹線の中で、京助は自虐的に笑った。
工藤の言うとおり、自分でも嫌いなヤツにしつこくされたらイヤに決まっている。
りっぱにストーカーだろうことも重々わかっているつもりだ。
時間を置いてとも考えたが、どうしても動かないではいられず、焦燥感に追い立てられるように熱をおして工藤のオフィスを強襲した。
二十数年も生きてくれば、ここぞという場面が一つや二つは誰しもあるだろう。
タラシ等々周りから言われてはいるが、京助の持つ様々な状況のせいで勝手に女が群れてくるだけで、当人はその実不器用な男なのだ。
確かに、寄ってくる女たちと適当に遊んだことがないとはいえないわけで、周りのモテない面々からしてみれば、何を言ってるんだこの野郎とでも言われそうだが、実際これまで好きになった相手と恋が成就したことはなかった。
お前は直球過ぎる、何でそう愚直なんだ、と、兄の紫紀にはしょっちゅうからかわれるのだが、京助の本当のところをわかっているのは、他にはほんの一握りの仲間だけだろう。
手放したくないと思えば思うほど、相手は遠のいていった。
だが今度は、千雪だけは、どうしても手放したくはないのだ。
千雪が実家に帰ったと聞いた時、京助は少なからず動揺した。
警察を出てから工藤の車に乗り込んだ千雪を、はらわたが煮えくり返るような思いで見送った京助だが、それでもまだ取り戻せると思えた。
けれども京都は違うのだ。
京都にはあの男がいる。
ずっと、千雪の心の底にはあの男がいるのだ。
千雪はおそらく俺が気づいているとは思ってはいないだろうが。
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