いきなり京助が耳元で怒鳴る。
「いっそここで暮らすか、な? 二人で」
唐突な京助の言葉に千雪は耳を疑った。
「何、アホなこと」
「いいだろ? 俺もバカだった。よくわかったぜ、昔遊んでた女になんか同情してる間があったら、お前を抱いてろってな」
顔を向けると、ギラギラと感情をむき出しにした京助の目に出くわした。
「金輪際、俺はお前以外見ないし、お前をどこの誰にだって渡さねぇ。お前はここで小説でも何でも書けばいい。ずっとお前の世話をして暮らすってのもいいかもな」
「京助、熱でアタマまでイカレたんか?」
呆れて千雪は溜息をつく。
「フン、ああ、とっくにイカレてるさ。今頃わかったのか? こうやって捕まえてねぇと、千雪ちゃんはすぐどっかへ逃げ出したがるからな」
「お前のはただの執着や。何でそこまで俺に執着するんや」
京助はすると苦々しげに笑う。
「何で? お前を好きだからに決まってるだろうが」
千雪はそんな京助を睨みつける。
「好き? ……て、お前、パラノイアかストーカーとしか思われへん」
「ああ、パラノイアでもストーカーでも、何でもいい。お前を逃がすつもりはないからな」
しれっとそんな台詞を口にしながら、京助はまた千雪を抱き寄せる。
京助が身体を密着させた途端、千雪はすぐ京助の意図がわかって身を引こうとしたが、京助が離すはずもない。
「京助……ええ加減に…せぇ………!!」
口にする言葉とは裏腹に、身体の中の冷めやらぬ熱がまた京助によって勢いを取り戻す。
やがて頭の中が何も考えられなくなる程、京助に操られて深い愉悦の淵に突き落とされ、溺れていく。
千雪が意識を手放したことに気づいた京助は、ようやく千雪から身体を離し、疲れ切って動かない千雪の顔をじっとみつめた。