スキーと聞いてロマンチックな展開を期待してわんさか京助についてきた女の子たちも、ロマンチックどころか、ゲレンデで徹底的に京助に扱かれ、次にはスキーに誘っても敬遠されることになるのだ、という話も公一から聞かされていた。
「意外も何も、もともと中身は硬派なんだから、華やかな外面だけにつられて寄ってくる女の子たちには京助さんは手に余るって」
その京助が公一もスキーに誘ったのだが、今日は買い出しや掃除頼まれてるからとかうまくかわして、早々に車でスーパーに出かけてしまった。
「俺も二度目は拒否したる!」
午前中だけでも、公一の話はとことん理解できた。
カフェテリアでは、さすがに久しぶりの運動の後だったので、大盛のハンバーグセットを軽く平らげる京助の横で、千雪もハンバーグセットをきれいに食べ終わった。
カフェテリアで小一時間ほど休むと、「さあて、もういっちょ行くか!」と京助がのたまった。
はっきり言って今すぐにも帰りたい気分の千雪だったが、不承不承京助に従ってリフトに乗った。
それでも午後は、あまり一気にやると筋肉に負担がかかるということで、三時過ぎにはゲレンデを降りた。
「もうとっくに負担かけ過ぎや」
「フン、これしきで音を上げるんじゃねぇよ。お前、最近、道場も覗いてないだろ?」
ナビシートで文句を言う千雪に、すかさず京助が言い返す。
「るさいな、仕方ないやん、原稿かかりきりやってんし」
ああだこうだと言い合いながら山荘に戻る頃には、また雪が強くなっていた。
「お帰りなさい。どうだった? スキー」
出迎えた公一がにやにやと千雪に聞いた。
「次は俺が買い出し行ったるからな」
途端、公一は思い切り笑ってくれた。
「まあまあ、風呂、沸いてるから、入ってゆっくり疲れを癒しなよ」
「おう、千雪、先入れよ」
スキーやブーツを持って入ってきた京助は、リビングの暖炉の前に置いた。
「ほな…、先、もらうわ」
檜の広い風呂に浸かって手足を伸ばすと、身体のこわばりが一気に溶けていく気がした。
温泉など、不特定多数の人間が利用する場所は、過去のトラウマがあってどうしても苦手なのだが、この山荘に来て、この贅沢気分だけはなかなか味わい深いものがあった。
ゆっくり風呂に入って部屋に戻った千雪は、ふっと眠気が襲ってきてしばらくうつらうつらしていた。
目を覚ましたのは、何やら大きな声が聞こえたせいだ。
どうやら公一と京助が怒鳴りあっている。
はたと身体を起こして部屋を出ると、階下が騒がしい。
「救急車呼んだけど、さっき事故があってそっちからの帰りで、この雪だし、時間がかかるって」
公一の声だ。
「何かあった?」
慌てて階段を降りると、千雪はキッチンの前に立っている公一に尋ねた。
「咲子さんが……」
見ると、咲子が苦しそうに呻きながら床に倒れ、傍らに京助がいて咲子の容態を診ている。
「病院、こっちから車で行った方が近いな」
そこへ、藤原が担架を持ってきた。
「よし、公一、一、二の三で、乗せるぞ!」
咲子を担架に乗せると、公一が「ワゴン車、出してくる!」と走っていった。
藤原と京助が咲子を乗せた担架を玄関の方に足早に運んでいく。
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