「兄弟のスキンシップってとこ? あいつはいつも、横暴なだけで」
茶化して笑う紫紀を千雪は胡散臭げに見た。
「ほんまに、うちの中でもジャイアンなんか、お前は!」
今度は京助の背中に怒鳴りつけると、紫紀は大いにうけて笑い出した。
「よくわかってるねぇ、千雪くん! 全く、その通り! いつまでたってもお山の大将だからな、あいつは」
ひとしきり笑うと、紫紀は、ご馳走様、と言って自分の部屋に向かった。
「咲子さんは?」
キッチンに戻ると、千雪は早速京助に問いただした。
「無事手術終わって、子供も生まれた。二人とも無事だ。旦那がくるまで公一がついてる」
むすっとした顔で京助は言った。
「ふん、たまには医者らしいこともせんとな。まあ、よかったやん」
千雪はようやく胸のつかえが降りた気がして、大きく息を吐くと途端、自分は何も手伝うこともできなかったくせに、精神的な疲れを感じて椅子に座り込んだ。
「公一さん、メシは?」
「あいつが近くでメシ食ってくるまで、待っててやった。お陰で俺は腹が減って」
「お前も何か食うたらよかったやん」
千雪が言うと、京助はカレーを盛り付けた皿をテーブルに置いて、一瞬、間があった。
「藤原に聞いたんだよ、お前が何か作ってるって」
それだけ言うと、京助はガツガツと大盛のカレーに取り掛かる。
「……お前にしちゃ、まあまあだな」
あっという間に皿を空にすると、京助はえらそうに言った。
「うるさいな、カレーだけは、部活の合宿で鍛えられてるんや。インスタントやけどな」
紫紀と自分の食べ終わった皿をシンクで洗いながら、千雪は言った。
「そうだ、お前、言っておくが、兄貴に必要以上に近づくなよ、喰われるのはカレーだけじゃねぇぞ」
傲慢極まりない言い草に、千雪は振り返る。
「俺が誰と話そうと俺の勝手やし! いちいち、お前の指図は受けん!」
「皿なんか、食洗機に入れとけ」
京助は千雪の抗議など意に介さず、ぼそっと言った。
「うるさい!」
千雪は洗った皿を水切りかごに置くと、そのままキッチンを出て自分の部屋に駆け上がる。
だが、ドアを締め切る前に、京助が後を追って入ってきた。
「出て行け! お前なんか……」
言葉は噛み付くようなキスに遮られる。
京助はそのまま千雪をソファに押し倒し、息をする間も与えず口腔内を蹂躙する。
「……ん………っ!!」
千雪は京助の胸を必死で押し戻そうと腕を突っ張ろうとするが、バカ力でびくともしない。
息苦しくなった千雪は、京助の背中を拳で小突く。
「これ以上、何かしたら、即東京に帰るからな! 兄貴もいはるのに」
ようやく離されて、大きく息をつきながら、千雪は京助を見上げた。
「兄貴なんか、わかってるぜ? とっくに。あいつは俺なんかより無節操だからな一人になったと思って、しかもバイで」
「ほんで弟はタラシか? しょうもない兄弟やな! ほんまに! とにかく、すぐに出て行け!」
フッと笑うと、京助はきつく睨みつける千雪を離して立ち上がる。
「今更、昔の女どもを妬くなよ」
「誰が妬くか! ドアホ!」
「仕方ねぇな」
京助がドアへ向かうと、千雪はほっとしたように身体を起こした。
ところが、ガチャっとドアに鍵をかけると、京助は踵を返して戻ってくる。
千雪は逃れようと慌てて奥へ走り込むが、あいにくそこにあるのはベッドだ。
当然のように今度は二人してベッドに倒れこむ。
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