メリーゴーランド10

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 小夜子が芝にも研二の菓子とお茶をすすめると、にこにこと礼を言った。
「そう、高校の同級生の皆さんが来てくださったの。よかったわね」
 千雪が江美子が妊娠三か月だということや、研二に二人目が生まれることなどを話すと、小夜子は、そお、と言って少し口を噤んだ。
 研二や江美子にも、以前は小夜子が千雪の家を訪れるたびに会っていたが、夫が亡くなって以来、京都にも足を運んでいなかった。
「何だかまた京都に行きたくなっちゃった」
 小夜子もふさぎこんで引きこもっていた頃からは脱して、今はこうして店にも顔を出したり、会社の広報の仕事に戻ったりして、少しずつ前に進むようにはなっていた。
「ほな、行こ? 次の連休とかどや?」
「そうねぇ」
 千雪が勢い込んで誘うが、小夜子は頼りなげな微笑みを浮かべるだけだった。
「これ、美味しいですね。どこのお菓子です?」
 そこへ芝が言葉を挟んだ。
「これは京都の和菓子屋さんのお菓子ですの。この子のお友達のお店で」
 小夜子が説明すると芝は真剣な表情で千雪に向き直った。
「ほう、京都の? どちらになりますかな?」
「え、祇園の近くで『やさか』いう、友人で三代目になる店ですけど」
「ぜひそのご友人を御紹介願えませんか?」
 唐突な申し出に千雪は戸惑った。
「いや、申し遅れました、私、芝と申します」
 芝は名刺入れから名刺を取り出し、丁寧に千雪に渡す。
「実は今度有楽町に商業ビルを建設いたしまして、ターゲットは二十代から六十代くらいまで、少し高級感をもたせたファッションから雑貨までのショップが入る予定なのですが、そこには普通のカフェだけでなく、和テイストのカフェを入れる予定でおりましたところ、その店のオーナーとはどうも感覚が合わず、秋のオープンを前に頓挫いたしまして、今、入ってくださる店を探しているところなのです」
「はあ」
 何ともこたえようがなく、千雪は芝を見た。
「大変急な話で、胡散臭いと思われるかもしれないですが、このお菓子、非常に美味しいです。甘さも控えめなのに主張するものがあって、何より品があるというか、私も和菓子には目がない方ですが、このお菓子ほど魅了されたことはありませんよ」
「それは友人も喜びますが」
「失礼ですがご友人はよくあるコンテストなどには?」
「いえ、そういうのは嫌いなので」
 千雪ははっきりと言った。


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