メリーゴーランド9

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「当たり前だろ? 付き合っているやつがいるからってきっちり断った。ついでに俺に縁談とか持ってくんなって言っといた」
 京助はドヤ顔で答えた。
「お前はまたそういう、いい年なんだからもっと言葉を選べよ」
「今更だろ?」
「ほんまにジャイアンやな」
 千雪はボソリと言った。
 だが、千雪の中ではまださざ波は落ち着いてくれなかったし、京助本人の意思とは無関係に、この話が後々まで後を引くとは京助も思っていなかった。

  
 

 
 
 展覧会の初日には、京都から千雪の同級生らが何人も来てくれた。
 もちろん、江美子、菊子、桐島の三人に加え、住田優里奈も江美子らと一緒にやってきた。
 研二は井原と一緒に現れ、会場で三田村や千雪と合流した。
 この時ばかりはいつものコスプレは棚に上げ、素のままの千雪でみんなを出迎えた。
 昼にはみんなで近くのファミレスに入り、高校時代に戻ったかのように騒いだため、店のスタッフに注意を受けたりした。
 その時菊子が、江美子の妊娠を告げたので、隣り合ったテーブル席はまたわっと沸いた。
「三か月。順調そのもの」
 はにかむ江美子は本当に幸せそうに見えた。
「もう一つおめでた。研二くんとこ二人目、夏に生まれるんよ」
 今度は江美子が言うと、千雪は研二を見た。
「もう二人目かいな。どんどんオヤジになりよるな、研二!」
 三田村が茶々を入れると、研二は苦笑した。
「まあこいつ、昔からオヤジくさかったよってな」
 皆が笑った。
 ふと垣間見えた気がした研二の表情の陰りのようなものは、見間違えだったのだろうと千雪も笑った。
 幸せなんやな。
 江美ちゃんも研二も。
 ほんならええんや。
「千雪、土産いうてもうちの、俺の作った菓子ですまんけど、小夜子さん、好きや言うてくれはったから」
 ファミレスを出ると、また夜に飲み直すことにして皆が宿泊先のホテルに戻るという時、研二が千雪を呼び留めた。
「ああ、おおきに。小夜ねえ喜ぶわ。あれ、俺には?」
「お前はまた店に来たらええやろが」
「オヤジになってケチクソうなったんちゃうか?」
 研二はすると千雪の頭を掻きまわして笑った。
「ハチ公前に七時、迷うなや」
「迷うか。ナビがあるわ」
 三田村は会社に戻り、千雪はその足で日本橋の大和屋に向かった。
 研二の菓子を渡すと、小夜子は喜んでお茶を入れてくれた。
 その時昔からの顧客で、銀座や六本木などにビルをいくつか持っているという芝という恰幅のいい中年の男が、スタッフから成人式を迎える娘に誂えたいという着物の生地の説明を受けていた。

 


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