メリーゴーランド103

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 辻は高校時代まで、その界隈では名前の知られたヤンキーの頭で、集団でバイクを乗り回したりもしていた。
 大学進学で横浜に来た当初はそんな顔を見せていなかったようだが、そのうち腕のたつ仲間と知り合い、暴れないバイク乗り仲間でよくツーリングに行ったりしていたらしい。
「そうか。なあ、研二がこっち来てるん知っとったか?」
「研二が? いや」
 千雪は研二が離婚したことを告げ、ちょうど東京出店の話がもちあがり、この秋から有楽町のビルで支店長だと簡単に説明した。
「そらまた、急展開やな」
「今度、研二が落ち着いたら、三田村とかと一緒に飲み行かへんか?」
「おう、研二の新しい門出祝いちゅうやっちゃな。ほな、また知らせてくれ」
 高校時代、ヤンキーという噂のせいで周りから遠巻きにされていた辻だが、研二とは何故か言葉を交わしていたのを、千雪は覚えている。
 二人ともガタイがでかく、腕に自信ありという者同士だったからかどうかはわからないが、辻にとっては研二は数少ない友人だったのではないか、と千雪は思っている。
「おもたせですけど」
 鈴木さんがシュークリームとコーヒーを持って来てくれた。
「おおきに、ありがとうございます」
 工藤の電話はまだ終わりそうになかった。
「今度、ひょっとしたら新しい方が入社されるかも知れないそうなんです」
 鈴木さんは嬉しそうにそんなことを言った。
「ほんまですか? よかったですね」
「ええ、今そのことで小田先生とずっとお話されていて」
 小田は工藤の大学時代の同期であり、この会社の顧問弁護士でもある。
 そのことで、というと、また小田絡みでの入社ということだろうか。
 広域暴力団大手中山組の組長というのが、縁は切っているが工藤の伯父にあたる。
 この会社や工藤は全く関係がないわけなのだが、血縁ということで警察にも目を付けられているし、新入社員の面接の際、工藤がその話をすると、大抵学生は回れ右で帰ってしまい、人手不足はなかなか解消されないようだ。
 鈴木さんの話によると、入社してから事実を知って辞められるよりはいいという理由から、工藤は最初凄んで見せるらしい。
「凄まんでも十分オーラが出てるわ」
 千雪はボソリと口にする。
 シュークリームを齧っているとまた携帯が鳴った。
 研二だった。

 


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