「お疲れ。え? ああ、今青山プロダクション、映画のプロデューサーのとこや」
デザイナーとも話し合い、箱などのデザインも決まって、菓子の方は紫紀から絶賛されたので、店の職人らと打ち合わせをして準備を進めるために一旦京都に戻るのだと言う。
「そうか。辻も近々そっち帰る言うとったで。なんか俺も帰りたなった」
この夏も小夜子のこともあり、何だかだと忙しく京都には戻っていない。
戻ったら辻らと飲みに行く話をして、携帯を切った。
「何だ? 暇なのか? 先生」
ようやく電話を終えた工藤がデスクを立ってやってきた。
「そういう嫌味な呼称、やめてください」
何かあと一言言ってやりたいところだったが、向かいに腰を降ろした工藤の顔には疲れが滲み出ていた。
「年なんやから、ムリばっかしてはると倒れるんちゃいます?」
「暇なら代わりに動いてくれるか?」
腕組みをしたまま工藤がニヤリと笑う。
「三流探偵小説家には荷が重い仕事ですやろ」
「何だ、批評家にでもこきおろされたか?」
「そんなんしょっちゅうですわ」
「だったら何だ? 妙に卑下したみたいに」
「別に、事実を言ったまでやから」
「ようやく披露宴決まったらしいな」
「そうらしいですけど、その前にパリで式上げるらしゅうて、俺も駆り出される羽目になってしもて」
工藤は鼻で笑う。
「仕方ないだろう、お前の姉貴みたいなもんなんだし」
「はあ、ほんま、パーティとかゴメン被りたいとこなんですけどね。しかもあのでかさ」
「何人来るんだ?」
「五百人に抑えた言うてました」
「ほう? そりゃかなり絞ったな」
千雪は工藤を見た。
「え、そうなんですか?」
「東洋グループなら千人クラスでもおかしくないだろう。まあ、若い連中は二次会ってわけだ」
「げ、俺は披露宴だけで抜けますから」
そうか二次会ってのがあったか、と千雪はがっくりと項垂れる。
「賢明だな。俺にも招待状が届いたが、顔を出さないわけにも行かないだろう。全くクソ忙しい時に」
「ですよね!?」
そこだけは千雪も工藤に同意だ。
工藤にしてみれば大事なスポンサーの披露宴だ、すっぽかすわけにも行かないのだろう。
「そういえば、新入社員、いよいよ決まったんですて?」
千雪は齧りかけのシュークリームを平らげるとコーヒーを飲んだ。
「まあ、何とかな。やはり小田の依頼人だ。エリート商社マンが会社の金の使い込みを疑われて、警察に容疑者扱いされたんだ。小田が代理人で、裁判沙汰になったが、真犯人も見つけてやったらしくて、小田は警察を無能呼ばわりしていた」
「うわ、小田弁護士、名探偵顔負けやないですか」
「奴のとこには、有能なパラリーガルがいるからな」
「へえ。けど、エリート商社マン、濡れ衣が晴れたんやったら、会社戻らはるんやないんですか?」
すると工藤は苦笑した。
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