メリーゴーランド104

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 一通り、新しい菓子を満喫したところで、研二は徐に持参した紙袋から約十五センチ四方の桐箱を取り出した。
 小夜子と千雪が固唾を飲んで見守る中、研二が蓋を取るなり、二人とも絶句した。
「これって、菓子、なん?」
 ややあって、千雪が聞いた。
「そらそうや」
「溜息が出そうにきれい」
 ようやく小夜子も言葉を思い出したようだ。
「何だか、言葉では形容しがたいものがあるわね」
 花弁が幾重にも重なっているがバラだろう花が真ん中に二つ鎮座し、それぞれ白とも銀色ともつなかい輝きを持つ真珠を思わせる球体が花の中央に一つずつ、さらにはやはり白銀色の茎と葉を持つバラが開いたものと蕾とかいくつか絡み合い、二つの花を取り巻いている。
「金色はお好きやないいうことやったので、いぶし銀みたいな色になってしまいましたが、花は淡い色のバラがお好きやいわはったので、そんな感じに、花びらはねりきりを使うとります。茎や葉は飴細工でこさえてありますから、二日ほどはもつかと思いますが」
 小夜子と千雪は飽きもせず、箱の中を眺めていた。
「お前て、そういや、絵や工作得意やったもんな。おかあちゃんにもちょこっと習うとったし。けど、こないなもん創るアーティストになるとは思わんかった」
「大げさや。俺はただの和菓子職人や」
 子供の頃のことを思い起こして千雪が言うと、研二は苦笑した。
「それに、こんなんよりもっとすごいもん創らはる職人はいくらでもいてるし」
「研二さんらしいわね」
「それより、味見をしてもらわんと………」
 研二はもう一つ小さな箱を取り出して開けると、そこには小さい花がいくつか入っていた。
「ほんと、食べるのもったいないくらい」
 そう言いつつ、小夜子も千雪も花弁を口に入れた。
「美味しいわ、ほんのり甘くて後に残らない優しい感じね」
「和三盆も使うとります」
「俺はこのくらいの甘さでええと思うけど」
 千雪は頷いた。
「ご家族で味見してみてください」
「ええ、あ、そうだわ!」
 小夜子ははたと思いついて携帯を取り出し、菓子を撮影した。
「一応紫紀さんに送っておくわね」

 


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