メリーゴーランド106

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「あーあ、それに比べて俺は何しとんのや」
「俺もさっき同じことを思うとった」
「お前は来年、原作の映画が封切られるやんか」
「映画は映画やろ。どうせ俺のは三文探偵小説やし」
 すると三田村が吹き出した。
「何、拗ねてんね。それより、江美ちゃん、いつやった? 生れるの」
 三田村も気になっているらしい。
「勝手に桐島と連名で祝い送ったんやけど」
「ああ? まだ連絡とってないんか?」
「距離置こうって言われてんのに、連絡いれたかてあかんやろ」
 こっちはまだこじれているようだ。
「桐島も送ったかも知れんやろ」
「まあ、そん時はそん時や」
「まだ予定日は二カ月先らしいけど」
「そうか。ほんであのアホ旦さん、まだ離婚せえへんのんか?」
行いを考えれば当然と言えば当然だが、江美子の夫は、同級生の間ではかなり辛辣な言われようだ。
「うーん、今は生まれてくる初孫のことだけでいっぱいで、おっちゃんらも放っとるらしいけど」
「そうか、まあ、生まれてもしばらくは孫中心やろけど、落ち着いたら、アホ旦さんのことも考えンとな、江美ちゃんも」
「せやな」
 子どものことは誰もが喜んでいるし、江美子も幸せそうな顔をしているが、これ以上江美子が家の犠牲になる必要はないはずだ。
 それは江美子の両親もわかっていることだろう。
 きっちりけじめをつけて、江美子は江美子で自分の幸せを考えた方がいいのだ。
 けじめか。
 俺こそやな。
 千雪は心の中で呟いた。
 三田村と桐島から江美子にお祝いが届いたと、菊子からラインがあったのは翌日のことだ。
 研究室で学生の論文を読んでいる時に、携帯が鳴った。
『桐島さんからと、三田村と桐島さん連名で届いたらしいけど』
 菊子のラインに、三田村から勝手に連名で送ったらしいと返信すると、男一人からやと体裁悪いからて適当な言い訳しといたけど、と返ってきた。

 


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