メリーゴーランド110

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「年なんやから、ムリばっかしてはると倒れるんちゃいます?」
「暇なら代わりに動いてくれるか?」
 腕組みをしたまま工藤がニヤリと笑う。
「三流探偵小説家には荷が重い仕事ですやろ」
「何だ、批評家にでもこきおろされたか?」
「そんなんしょっちゅうですわ」
「だったら何だ? 妙に卑下したみたいに」
「別に、事実を言ったまでやから」
「ようやく披露宴決まったらしいな」
「そうらしいですけど、その前にパリで式上げるらしゅうて、俺も駆り出される羽目になってしもて」
 工藤は鼻で笑う。
「仕方ないだろう、お前の姉貴みたいなもんなんだし」
「はあ、ほんま、パーティとかゴメン被りたいとこなんですけどね。しかもあのでかさ」
「何人来るんだ?」
「五百人に抑えた言うてました」
「ほう? そりゃかなり絞ったな」
 千雪は工藤を見た。
「え、そうなんですか?」
「東洋グループなら千人クラスでもおかしくないだろう。まあ、若い連中は二次会ってわけだ」
「げ、俺は披露宴だけで抜けますから」
 そうか二次会ってのがあったか、と千雪はがっくりと項垂れる。
「賢明だな。俺にも招待状が届いたが、顔を出さないわけにも行かないだろう。全くクソ忙しい時に」
「ですよね!?」
 そこだけは工藤に同意だ。
 工藤にしてみれば大事なスポンサーの披露宴だ、すっぽかすわけにも行かないのだろう。
「そういえば、新入社員、いよいよ決まったんですて?」
 千雪は齧りかけのシュークリームを平らげるとコーヒーを飲んだ。
「まあ、何とかな。やはり小田の依頼人だ。エリート商社マンが会社の金の使い込みを疑わられて、警察に事情聴取されたんだ。小田が代理人で、裁判沙汰になったが、真犯人も見つけてやったらしくて、小田は警察を無能呼ばわりしていた」
「うわ、小田弁護士、名探偵顔負けやないですか」
「奴のとこには、有能なパラリーガルがいるからな」
「へえ。けど、エリート商社マン、濡れ衣が晴れたんやったら、会社戻らはるんやないんですか?」
 すると工藤は苦笑した。
「まあ、色々事情があるらしい。第一に、会社に対しては心底怒りしかないようだ」

 


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