メリーゴーランド110

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「るせえ。やっと一区切りついたんだ。てめえの顔なんかみたらまた胸くそ悪くなる」
 京助は吐き捨てるように言った。
「ご挨拶だな。で? 名探偵はその後どうよ?」
「何がだ?」
「幼馴染が亡くなったのがまだ糸を引いてるのか?」
 京助は余計に眉を寄せた。
「そう簡単に吹っ切れるわけがない」
「だからだ。心配にもなるだろう、俺がカウンセリングしてやろうか?」
「お前にカウンセリングなんてことを考えただけであいつの精神状態は低下する」
 速水は笑った。
「俺じゃなくてもグリーフケアは重要だ」
 速水が言うことも確かだと京助にはわかっている。
「今のところ、忙しくてそれどころじゃないだろう」
「探偵小説の締め切りとか?」
「まずそれが先だな。とりあえず終わったら、週末にどこかに連れて行こうかと思っている」
「そうか。どこ行くんだ?」
「聞いてどうする?」
 胡乱な目つきで京助は速水を見た。
「何だその疑り深い目は。俺は名探偵を心配しているだけだぞ?」
「ケアが必要なのはあいつらみんなだ」
「あいつら?」
「ご学友だ。いきなりショッキングな亡くなり方で友人が消えてみろ」
 千雪の学友たちの絆はかない強い。
 それだけ悲しみも深いかもしれないと、千雪の家に集まった面々を思い浮かべていた。
 なまじっか子供の誕生という幸せを掴む寸前だった江美子を思うとやり切れないのは京助も同じだった。
「なるほど。だがまあ、そうやって悲しみを共有できるのならまだマシかもしれないな」
 速水は一人頷いた。
「あの、京助先輩」
 不意に声がかかって京助は顔を上げた。
 ぬぼっとした顔で佐久間が立っていた。
「ちょっとお聞きしたいことが。あの、千雪先輩のことで」
 最近は遠巻きにして千雪にあまり寄ってこないと聞いていた。
「何だ? 今なら聞いてやるから座れ」
 佐久間は速水をチラリと見た。
「こいつは壁だとでも思え」
「はあ、でも……」
 すると速水はニヤニヤと笑い、「こいつと名探偵のことならよく知っているから気にしなくていい」などと言う。
 ジロリと京助は速水を睨んだが、否とは言わなかった。

 


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