メリーゴーランド116

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『それはまだ先の話らしいけど、三田村も仕切り直しやて』
 桐島はまたドイツに発ったようだが、三田村もこれで少しは気が晴れたことだろう。
「飲み会、三田村、ハイテンションで来よるな」
 辻や研二との飲み会は、研二の店の方が一段落ついてからということになっていた。
 十月に入ると街路樹の葉が少しずつ色を変えつつあり、季節は秋の様相を呈していた。
 それでもまだ温かい日はテラスでコーヒーを飲むのには問題なく、無精髭の京助は難しい顔で頬杖をついていた。
「寝てないって顔だな、色男」
 向かいに座ってニヤリと笑ったのは速水だった。
「るせえ。やっと一区切りついたんだ。てめえの顔なんかみたらまた胸くそ悪くなる」
「ご挨拶だな。で? 名探偵はその後どうよ?」
「何がだ?」
「幼馴染が亡くなったのがまだ糸を引いてるのか?」
 京助は余計に眉を寄せた。
「そう簡単に吹っ切れるわけがない」
「だからだ。心配にもなるだろう、俺がカウンセリングしてやろうか?」
「お前にカウンセリングなんてことを考えただけであいつの精神状態は低下する」
 速水は笑った。
「俺じゃなくてもグリーフケアは重要だ」
 速水が言うことも確かだと京助にはわかっている。
「今のところ、忙しくてそれどころじゃないだろう」
「探偵小説の締め切りとか?」
「まずそれが先だな。とりあえず終わったら、週末にどこかに連れて行こうかと思っている」
「そうか。どこ行くんだ?」
「聞いてどうする?」
 胡乱な目つきで京助は速水を見た。
「何だその疑り深い目は。俺は名探偵を心配しているだけだぞ?」
「ケアが必要なのはあいつらみんなだ」
「あいつら?」
「ご学友だ。いきなりショッキングな亡くなり方で友人が消えてみろ」
 千雪の学友たちの絆はかない強い。
 それだけ悲しみも深いかもしれないと、千雪の家に集まった面々を思い浮かべていた。
 なまじっか子供の誕生という幸せを掴む寸前だった江美子を思うとやり切れないのは京助も同じだった。
「なるほど。だがまあ、そうやって悲しみを共有できるのならまだマシかもしれないな」
 速水は一人頷いた。

 


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