「ああ、ひょっとして京助先輩の手作りとか?」
「さっきも思うとったんや。あいつサンドイッチ屋でもできるで」
がくりと項垂れる佐久間を前に、千雪は次のサンドイッチに取り掛かる。
「はあ、昨日、京助先輩や速水さんに聞きましたよって」
今度は千雪の手が止まる。
「聞いたて何を?」
「せやからそのう、京助先輩の言われたには、俺と千雪の付き合いは五年越しやから、邪魔するな………て」
途端に千雪は「あの、アホんだら! 端から言って回りよって!」と、今朝ほど見直したはずの京助をこき下ろした。
「あ、いやあの、他言したらただじゃ置かないって、念を押されましたよって、はい、一切、もちろん彼女にも絶対!」
「当たり前や!」
千雪は佐久間を睨み付けた。
「そんでそのう、コスプレのわけも聴きました。速水さんに」
「速水さんが何言うたんや?!」
身を乗り出して千雪は佐久間に迫る。
「やから、先輩、女の子に追いかけまわされてトラウマになったらしいて………」
佐久間は思わず後ろへ顔をそらしながら答えた。
「フン。初めはな。まあ、反応を見るんがおもろいから、今日もメチャ、あり得へん組み合わせで決めてきたんや。俺が近づくと、見事に女子が蜘蛛の子散らすみたいに逃げよったで」
ちょっと笑みを浮かべてそう言う千雪に、「先輩……」と佐久間はまた情けなさそうな声を出した。
「あ、佐久間さーん!」
一人の女子大生がにっこり笑って近づいてきた。
千雪はサンドイッチを齧りつつ、ちらりと彼女の方を見た。
肩を越すくらいなサラリとしたきれいな髪、黒目がちな可愛いさとスッとした鼻のきれいさを併せ持ち、ニットに細身のデニム、ショートブーツがプロポーションの良さを際立たせている。
「伊藤さん」
佐久間がちょっと上ずった声で女子学生を振り返った。
「えっと、ひょっとして名探偵さんでしょ? はじめまして、伊藤です」
すると伊藤は千雪の前に立ち、にっこりと自己紹介した。
千雪はいつものごとくちょっと頭を下げただけで伊藤を見上げた。
自分が美人であることを知っていて愛想よく声をかけると男が落ちると思っているタイプだと千雪はすかさず分析した。
「わあ、美味しそう! ご自分で作られたんですか?」
「いや」
言葉少なに千雪は否定した。
「作ってもろたみたいですよ」
代わりに佐久間が答えた。
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