メリーゴーランド117

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「あの、京助先輩」
 不意に声がかかって京助は顔を上げた。
 ぬぼっとした顔で佐久間が立っていた。
「ちょっとお聞きしたいことが。あの、千雪先輩のことで」
 最近は遠巻きにして千雪にあまり寄ってこないと聞いていた。
「何だ? 今なら聞いてやるから座れ」
 佐久間は速水をチラリと見た。
「こいつは壁だとでも思え」
「はあ、でも……」
 すると速水はニヤニヤと笑い、「こいつと名探偵のことならよく知っているから気にしなくていい」などと言う。
 ジロリと京助は速水を睨んだが、否とは言わなかった。
「千雪先輩、ご学友が亡くなられたとかで、かなりきつそうやったんですが……」
「そりゃま、きついさな。簡単にダメージが回復するわけはない」
「そ…う、ですよね………」
「それだけか?」
 京助が促すと佐久間はちょっと戸惑い気味に口を開いた。
「あのう……やから、そんな時に先輩に聞くわけにもいかへん思うし……けど、もう、ずっと、俺の中で、わけわからんようになってしもて………」
 京助はフンと鼻で笑う。
「だから何だ?」
「あのう………やから、京助先輩は、そのう、あの人と付き合うてたんやと思うてたんやけど、真夜な…………いや、そのう………」
 佐久間は途中で言葉を切って首を傾げる。
「ああ、こいつの真夜中の恋人のことか?」
 横から速水が口を出す。
「え……いや、その言葉言うたら二度と口きかんて、千雪先輩いわはるし」
 速水は声を出して笑った。
「そりゃそうだな」
「るせえぞ、克也。だから何が言いたいんだ? てめえらが勝手に千雪のことをくだらない名前で呼ぶからあいつがキレたんだろうが」
 京助は腕組みをしてふんぞり返る。
「いやだから、そのう、俺てっきり、京助先輩あの人と付き合うてた思うてたから、そのう……キスしてたんオレ、見てもうたし…………………」
「付き合うてたんじゃなくて、だから付き合ってるぜ?」
 佐久間は何か言いかけた口をあんぐり開けたまま京助を見た。

 


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