「それよりお前、理沙子さん以外に目移りしよると、足元すくわれるで? 彼女みたいな人は、あかん思たらスパッと切るんやないか?」
「ひええええ、やめてくださいよ! そんな………」
千雪に脅されて、佐久間は慌ててラインを確かめ始めた。
頃合いを見計らったように千雪の携帯が鳴った。
「ああ、お疲れ様です。はあ、ちょうど原稿は上がったとこですけど」
青山プロダクションの工藤からで、これからちょっとこられないかという。
映画のプロモーションで使う、写真の撮影をしたいというのだ。
「こないだのヤツではあかんのですか?」
千雪が嫌がるのをわかっている工藤が、小出しにあれもこれもと言ってきている気がする。
「うちのカメラマンが撮るだけだから安心しろ」
やはりうまく丸め込まれている気がする千雪だったが、この後、予定があるわけでもなく、研究室でだらだら論文をまとめるくらいだったのでOKした。
「わかりました。ほな、三時頃までには伺います」
携帯を切ると、「出かけはるんですか?」と佐久間が聞いた。
「こんなええ天気やのに、もったいないやろ」
千雪はうん、と伸びをした。
少しだけ千雪はホッとした。
このまま佐久間といると、必要以上に佐久間に攻撃的な言葉を投げつけそうな気がした。
モラハラ一歩手前? や、モラハラか?
時折無暗に感情が昂ったり、限りなく地の底まで落ち込んだりと、自分でも持て余し気味な心の揺れをどうしようもなかった。
いっそのこと、京助が誰でもいいから女とどうかなってくれればいいのになどと思うこともある。
誰も彼もが自分を嫌ってくれればいいのにと、自虐的な思いにかられ、わざと露悪的なことを言いたくなる。
さっき、女子学生の中に江美子を見たような気がした時、千雪はよくわかった。
心のダメージが思った以上にきついのかも知れない。
深く眠りたい、そんなことを思う。
ほんまに、カウンセリングとか必要かもな。
速水でなければいつでも聞いてもらいたいところだが。
アパートに一旦戻ると、今日のベスト?ミスマッチ配色のジャージを脱ぎ捨て、ニットの上にテーラードジャケット、パンツはグレー系で地味目に揃え、黒のUチップシューズを履いて部屋を出た。
もちろんメガネは必要だ。
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