メリーゴーランド12

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「可哀そうやないの、あんな男前つかまえて」
 三田村の勧めるドイツワインで乾杯し、ソーセージや牡蠣のオーブン焼き、魚介のペスカトーレなどに舌鼓をうつ。
「桐島、ドイツに戻ったん?」
「明日の便で行くから、今夜はムリみたいで」
 千雪が尋ねると、三田村は少し浮かない顔で答える。
「どないかした?」
「いや……それより、お前ら、いっつも描いてもろてたんやな。江美ちゃんと千雪はわかるけど、研二もか?」
 今回の展覧会のためにあちこちから借りたりしたのだが、三田村は子供の頃三人が庭で遊んでいるようすなどが描かれた絵がいくつもあるのを見て、そんなことを言った。
「うちと大きな庭を挟んで江美ちゃんちと、少し向こうやけど研二のうちがあって、俺ら同級生やったからな、よううちで遊んどったな」
「ワンコもな」
「ああ、何? シェパードなんかいたん?」
 研二が笑うと三田村が聞いた。
「ずっとガキの頃な」
 大きいけど可愛い兄弟分だったのだと、千雪は思い起こす。
「ええ、絵やな」
 井原があらためて言った。
「せやな。ほっとする、いうか、今さらやけどこれはやって正解やった思うで」
 三田村が頷きながら言った。
「あ、研二、忘れんうちに」
 と、千雪はポケットから先ほど大和屋で会った芝の名刺を差し出した。
「ん?」
「いや、研二の菓子、小夜ねぇんとこ持ってったら、たまたまお客でおったおっちゃんが」
 千雪は有楽町に商業ビルを建てたという芝の話をかいつまんで話した。
「うちが? 東京に店? あかんやろ」
 研二は苦笑いした。
「京都のすみで細々とやっとる菓子屋やで?」
「なんでや、ええ話やんか。芝ビルいうたら、東京でも有名なでかい商業ビルいっぱいあるねんで? 芝さんて、ほな、そこのCEOやろ」
 三田村が勢い話に割り込んだ。
「そんなえらいさんが、お菓子を認めてくれたんやろ? 研二くん、チャンスかも知れへんよ?」
 菊子までが煽り立てる。
「俺もええ話やと思うわ。話だけでも聞いたったら?」
 井原が冷静に言った。
「まあ、お前が決めるこっちゃし、電話する言うたはったから、話だけでも聞いたらええよ」
 研二は千雪の言葉に、「わかった」と笑った。

 


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