全く千雪専用のシェフと化している京助の作ったそれは、それこそサンドイッチ屋でもできそうに美味い。
味わいながら咀嚼していると、目の前に影が落ちた。
「あの、すんません、ここ、ええですやろか」
見上げると佐久間が神妙な顔で立っていた。
せっかくの美味いランチを邪魔された千雪は、怪訝な目を向けた。
「何の用や?」
「すんません、知らぬこととはいえ、俺が浅はかでした。堪忍したって下さい」
そう言うと、佐久間は九〇度も頭を下げる。
「何のこっちゃわかれへんけど。お前、俺に何かしたんか?」
「え、やから、そのアホな呼び名を口にしよったら、金輪際口聞かん言わはって!」
「当たり前やろ」
しれっと言う千雪に、佐久間は情けない顔を向けた。
「二度と口にしまへん!」
「ふーん」
千雪はそんな佐久間を鼻であしらって、持っていたサンドイッチを食べ終えた。
「美味そう、すね………先輩手作りでっか?」
「俺にこんな大それたもん作れるわけあれへんやろ」
それを聞くと佐久間は、また情けなさそうに笑う。
「ああ、ひょっとして京助先輩の手作りとか?」
「さっきも思うとったんや。あいつサンドイッチ屋でもできるで」
がくりと項垂れる佐久間を前に、千雪は次のサンドイッチに取り掛かる。
「はあ、昨日、京助先輩や速水さんに聞きましたよって」
今度は千雪の手が止まる。
「聞いたて何を?」
「せやからそのう、京助先輩の言われたには、俺と千雪の付き合いは五年越しやから、邪魔するな………て」
途端に千雪は「あの、アホんだら! 端から言って回り寄って!」と、今朝ほど見直したはずの京助をこき下ろした。
「あ、いやあの、他言したらただじゃ置かないって、念を押されましたよって、はい、一切、もちろん彼女にも絶対!」
「当たり前や!」
千雪は佐久間を睨み付けた。
「そんでそのう、コスプレのわけも聴きました。速水さんに」
「速水さんが何言うたんや?!」
身を乗り出して千雪は佐久間に迫る。
back next top Novels