メリーゴーランド123

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「やから、先輩、女の子に追いかけまわされてトラウマになったらしいて………」
 佐久間は思わず後ろへ顔をそらしながら答えた。
「フン。初めはな。まあ、反応を見るんがおもろいから、今日もメチャ、あり得へん組み合わせで決めてきたんや。俺が近づくと、見事に女子が蜘蛛の子散らすみたいに逃げよったで」
 ちょっと笑みを浮かべてそう言う千雪に、「先輩……」と佐久間はまた情けなさそうな声を出した。
「あ、佐久間さーん!」
 一人の女子大生がにっこり笑って近づいてきた。
 千雪はサンドイッチを齧りつつ、ちらりと彼女の方を見た。
 肩を越すくらいなサラリとしたきれいな髪、黒目がちな可愛いさとスッとした鼻のきれいさを併せ持ち、ニットに細身のデニム、ショートブーツがプロポーションの良さを際立たせている。
「伊藤さん」
 佐久間がちょっと上ずった声で女子学生を振り返った。
「えっと、ひょっとして名探偵さんでしょ? はじめまして、伊藤です」
 すると伊藤は千雪の前に立ち、にっこりと自己紹介した。
 千雪はいつものごとくちょっと頭を下げただけで伊藤を見上げた。
 自分が美人であることを知っていて愛想よく声をかけると男が落ちると思っているタイプだと千雪はすかさず分析した。
「わあ、美味しそう! ご自分で作られたんですか?」
「いや」
 言葉少なに千雪は否定した。
「作ってもろたみたいですよ」
 代わりに佐久間が答えた。
「ええ、すごおい、こんな美味しそうなお弁当作ってくれる彼女さんがいるんだ?」
 さらににこやかな笑みを浮かべて、伊藤は声のトーンを上げた。
「あ、何か俺に?」
 何も答えず食べている千雪の弁明をするかのように、半分期待感を持って、佐久間が聞いた。
「ねえ、今日は京助さん、いらっしゃらないのかなあ」
 可愛いおねだり風に伊藤が言った。
「ああ、今日は出張でしたよね? 京助先輩」
 佐久間の問いにも答えない千雪に焦るように、佐久間が続けた。
「確か大阪の学会やなかったかな」
「なんだ、そっか。すみません、お食事のお邪魔しちゃって」
 ちょっと斜めに可愛らしく頭を下げて伊藤は立ち去った。
「びっくりしたあ、あの子、今年のミスT大、きれい可愛いし笑顔が素敵だって評判の伊藤涼香ですわ」
「へえ、きれい可愛いねえ」
 千雪は興味もなさげに残りのサンドイッチに手をつけた。

 


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