メリーゴーランド126

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 千雪も息をのんでリビングのあたりだろう方向を見つめた。
 すると確かに中で灯りが動いているのが見えた。
 駆け込んで確かめないとという思いにかられたものの、アスカが硬直したように腕を離さない。
 お前はすぐカッとなって突っ走る。
研二によく言われたのを思い出し、少し深呼吸する。
ここで飛び込んで、もしアスカに危害が及んだら元も子もない。
「よし、そっと外に出るで。出てから警察に知らせるんや」
 千雪は固まっているアスカを促して、門の方へ静かに戻った。
 門の横のドアを静かに閉めると、千雪は携帯で警察を呼ぼうとした。
「怖い! ここから逃げたい!」
 だがそうやってアスカが千雪にしがみついているので、仕方なく千雪は、アスカに案内させてひとまず少しでも大きな通りへ出ることにした。
「家はセキュリティシステムとか何か使こてる?」
 歩きながら、千雪はアスカに聞いた。
「ううん。最近、カメラとか設置したけど、うち、おじい様もパパもママも絵に描いたような楽天家で、うちなんかに泥棒が入るわけがないとかって……はあ」
 アスカは大きくため息を吐く。
「楽天家はええけど、あんだけ大きな構えの家やのに、ワンコとかもいてへんの?」
「大くんが、うちのワンコが亡くなって半年なの。まだ次の子迎える気になれなくて」
「うーん、案外、子犬とか迎えよったら、ペットロスも子犬の世話にかまけて軽くなるんちゃう?」
「そうかな~」
 その時、千雪は薄暗がりだがカーブミラーに黒いスーツの男二人を遠くにとらえた。
「そこ、右曲がったら走るで」
「え?」
「追っかけて来よる。振り向くな!」
 アスカはこくんと頷くと、四つ角で右に曲がった途端、千雪に引っ張られて走った。
 やや走ったところで、千雪はすぐにまた家と家の間の細い路地に入った。
 男たちが走って行くのを横目に、二人は路地を通り抜け、逆方向へタクシーの拾えそうな道へと走った。
 ちょうど向こうからやってきたタクシーを停めると、二人はすぐに乗り込んだ。
 一瞬考えたが、「すみません、麻布、お願いします」と運転手に告げた。
 アスカは唇を噛んだまま何も言わない。

 

 


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